華籠恋謳

□籠の鳥篭の華・弐
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アタシらは此処でしか生きて行けないんだからさ

 

一度此方に慣れちまうとあっちに戻れんのか…心配になるんだよ

 

 

そう言った女はもうこの籠には居ないけれど、

 

未だに籠の中に囲われたままの俺は―……

 

 

 

 

外はまさに昼の世界から夜の世界に変わろうとする宵薄闇。

 

ぽつりぽつりと提灯に灯が点されいく様は不思議と幻想的な物で、毎日この光景を見るたびに此処が夜の世界である事を政宗は再認識していた

 

 

 

 

 
「政宗殿?」
「!幸、村?」
「大丈夫でござるか?ぼーっとしておられましたが」「…大丈夫だ…もう見世に出る時間か?」
「未だでござるよ、それに今日は雨が降っております故…政宗殿は見世に出ずとも」
「……良い、出る」
「?片倉殿は…」
「アイツとずっと居ると調子が狂う」
 
 
 
そう言って支度の続きをする政宗に首を傾げた幸村だったが無口になった政宗の様子から何かを察したのか部屋の襖を開き政宗についている禿の一人に言伝てを頼んだ
 
 
―今宵は片倉殿が来ても政宗殿の体調が悪いと言って下されと謙信殿にお伝え願えるか?
 
 
 
こくん、と頷いて階下へと下りる少女を見届け襖を閉めた幸村に政宗は一言悪い、と呟いた

 
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