華籠恋謳
□獣-光と闇-
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守ると、誓った
何があろうとも、この命を散らそうとも守ると誓った其の背に。
今、抜き身の刃を突きつけているのは他ならぬ己
「……ぃ、おい!」
「!」
「ボーッとしてんなよ小十郎、どうした?」
「申し訳ありません…少し失念していたようです」
「おいおい、頼むぜ小十郎。別動隊は任せたからな」
「はっ…」
此処から地図上では目と鼻の先に布陣しているのは梟雄、松永久秀
以前政宗様の六の刀を狙い、汚いマネを仕掛けてきた人間。
だが。
今の俺にとってはこの茶番の協力者だった
“奥州筆頭”を殺す為の
見慣れた背中に視線をやる。
青の衣に包まれた身体は間違いなく少女の物
そう、この今にも折れてしまいそうな背を、俺は守って来た…政宗様が男として、伊達家当主として生きられる事を決意されたあの日から
いつからだっただろうか、政宗様に邪な思いを抱き始めたのは
主である、女と言えど城主の娘と神官の息子、身分が違う、分かっていた。
しかし政宗様は俺を受け入れて下さった。