遊戯咏
□変わりゆくココロ変わらないモノ
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初めは赤ん坊の頃、兄や両親に囲まれている写真や机に捕まって歩く姿等々…自分で言うのも何だが可愛らしかった姿が並んでおりふ、と笑みを浮かべた彼だったがあるページをめくって出てきた写真に眉を潜めた
その写真に写っているのは目に涙をいっぱい溜めている少女とそれを慰めようと必死な自分。
(………要らぬ事を思い出した)
ぱらぱらとめくられていく中でほぼ全ての写真に二人が写っており、元就はため息をついてアルバムを閉じた
「元就にとってはあまり思い出したくなかったかな」
「……」
次に開いたアルバムに、もう彼女の姿は無い。
彼女は家の事情で遠い地へ引っ越してしまったのだ、元就の心に楽しかった記憶と淡い思いを残して
「……そろそろ夕御飯にしようか」
「はい」
夕飯を食べ終わり、部屋でいつも通りに予習と復習をこなし、一息ついて元就は兄が本棚に並べたアルバムの一冊を手に取った
コンコン
「!」
「おーい元就、昨日借りてた現文のノート返してぇんだけど起きてるかぁ?」
「お、起きておるわ!」
窓を叩く音と声にアルバムを再び本棚に押し込むと元就はカーテンを開け、鍵のかかっていない窓を開けた、と其処に居たのは紛れもなく隣人の長曾我部元親だった。
普通なら二階の窓を外から叩ける筈は無いのだが、隣接している家と家の間は30センチ程しかないので二人は物差しや孫の手なんかを使って叩いて相手を呼びつけていた。
わざわざ下まで下りなくて済むと言う理由で元親が元就の自室に近い部屋を自室に選んだのがコレの始まりだった訳だが。
「ノートありがとよ、それでちょっと分かんねぇ所あるからそっち行くぜ」
「我のノートに不備があったと?」
「いや、お前言い回しが難しいんだ、よっと!」
ひょい、と窓から窓へ飛びうつるのももう日常茶飯事となっており、元親が玄関を使うのは部屋に元就が居ない時か喧嘩した時に限られていた