華籠恋謳
□獣眼
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あれから一年、白石城の一室で小十郎によって生かされている。
「藤」
アイツは俺の事をこう呼んだ。
伊達政宗であった頃の名前、藤次郎からそう呼んでいるのだが最初は慣れなかったものだった
「…小十郎、帰って来たのか…」
「ああ…今日は一つ知らせがある」
「?」
「小田原へ参陣する」
「…豊臣に下るのか」
「ああ」
あの時の戦に出なかった家臣達、そして新たな伊達政宗をまとめて、今や奥州を牛耳っているのは実質上小十郎と言っても過言ではない。
俺は時折思う。
小十郎さえ居れば伊達家は潰れないんじゃないかと…
「……良いんじゃねぇか、お前が選んだんならな」
そう言って笑うと小十郎はそっと俺の腹に手をあてる
城主と家臣、以前の関係のままであったなら決して祝福されなかっただろう命がそこにあった。
一月前に判明した新しい命はすくすくと育っている
「俺と小十郎の子供だもんな…男か女か」
「女が良い、お前に似た、な」
「お前溺愛しそうだから怖いんだよな、俺を忘れんなよ」
「心配するな、お前が一番愛しい」
歪んだ愛と言われても構わない、
狂っていると言われても良い
それほど、小十郎は“俺”を愛してくれたから