ゆずの香

□ひとひらの幸福を
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昔、今よりもずっとずっと小さい頃、身の回りのことを教えてくれた優しい姉さんが言っていた。

曰く、女の子には、生まれたときから自分だけの騎士さまがいるのだそうだ。
強く優しく見た目も文句なしに麗しいその人は、ありとあらゆる苦難を乗り越え運命の女の子を追い求め、やがて出会った二人は磁石の対極が惹かれ合うかのように恋に落ちるのだと。

その頃のわたしは夢みがちに語る姉さんを見上げながら、ああそうなんだ、と素直に納得したものだけど、今となっては失笑すらいただけない夢物語だということがよく解る。だいたい、どこの世界にこんな場所に身を置く女を追い求める騎士さまがいるものか。騎士さまどころか、まともな神経を持った一般男性なら、まずこんなところにはこないだろう。


こんな、場末の春宿なんかには。


†ひとひらの幸福を†
 
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