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□even if
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ぼくと祀木は活動の拠点としている保健室でパスワードを探しに行った皆を待っていた。
今の時間は休憩してていいって言われたものの、のんびりと休める気分ではなく椅子に座っていると、向かい側にいた祀木が急に立ち上がった。
「どうしたの?」
そう聞くと祀木は気にしないでください、と一言言って廊下に続く扉へと手をかけた。
ぼくは祀木が次にとる行動と心理が予想できたから引き止めようと思ったけど、まあ彼のことだからきっと大丈夫だろう。
「それにしても、皆遅いなぁ」
祀木が出ていってから30分。
流石にこんなに長い間ぼく達だけ休んでるわけにもいかないよな。
ただでさえぼくのせいで皆に迷惑かけたし。
祀木が戻ってきたら相談してみよう。
彼の性格からして、同意してくれるに違いない。
そこでぼくの中に1つの疑問が生じた。
祀木はどこに行ったんだ?
行くところが決まってるなら、伝えてから行ってもいい気がするんだけど。
それに少し様子がおかしかったような…。
次々と最悪な方向の考えばかりが浮かんできた。
ついに膨れ上がってくる不安に耐えられなくなり、祀木が出ていったのと同じ方の扉を開けて、ぼくは目を疑った。
「祀木?」
保健室から出て直ぐの廊下の壁に、祀木が寄りかかるようにして倒れ込んでいた。
声をかけても反応がなく、不審に思ったぼくが近付こうと一歩踏み出した時。
「近寄んな」
耳を疑った。
声は間違いなくいつもと同じだけど、口調は似ても似つかない。
ぼくも同じことを経験したからわかる。
「…影化、してるのか?」
近寄るなって言われても、ぼくはそんなのを聞き入れないで手が届く距離まで行った。
せめて顔を覗き込もうと同じ高さくらいまでしゃがんだ直後、急にのびてきた手にぼくは反応することもできず、胸ぐらをつかまれて壁に押し付けられた。
予想外のことだったから受け身をとることは叶わなかった。
正直、凄く痛い。
「お前のせいでオレはっ」
突き刺さるような鋭い声に片目を開けて祀木を見ると、祀木の体中には黒い斑点が無数に散らばっていた。
「お前なんかいなければよかったんだ」
胸がズキッと痛んだ。
今の祀木は影化しているから、こんな酷いことを言ってるんだってわかってるし、そう思いたい。
だけど、どうしても振り払うことができなかった。
何か言い返そうとしてもいい言葉が思い付かない。
返答することもできない。
ぼくが言い返せなくて黙っていると、つかんでいた手を離して吐き捨てるように言った。
「お前もオレを恨んでやがっただろ?ちょうどいいじゃねぇか、オレに関わんなよ」
そう言い残して背を向ける祀木。
ひとり取り残される感覚に襲われたからか、影化していることなんか忘れて彼の腕をつかんだ。
どうにかしなければ。
危険な目にあってまでぼくを助けてくれた祀木を、今度はぼくが祀木を助けるんだ。
「祀木、ぼくはお前を助けたいだけなんだ」
必死だった。
目の前にいる彼を取り戻すことに。
祀木は相変わらず鋭い視線を向けて睨み付けてくる。
「信じられると思うか?」
「…信じれないなら、それでも構わない」
今の彼には何を言ったって説得できないだろう。
床に視線を落として言葉を続けた。
「だけど、これは本当だ」
一か八か、ぼくは覚悟を決めた。
少しの間の後、顔をあげてできる限りの笑顔で言ってやった。
「ぼくはどんな祀木だって好きでいる自信がある」
「……っ」
「好きなのに、ほっとけるわけないだろ?」
届け、届いてくれ。
この声が聞こえてるなら。
一瞬、祀木の体がびくっと震えた気がした。
そして、ぼくの手を振り払い、頭に手を当てて…。
「お前なんかに、負けて、たまるかっ」
あ…。
祀木だ。
いつもの、祀木。
祀木が、帰ってきた。
安心感によって力が抜けてしまったぼくは、床に座り込んでしまった。
そんなぼくを祀木は心配そうにしながら、手を差し出してくれた。
「先程は、その、すみませんでした」
今にも嫌悪感で自分を追い詰めようとしている彼を、ぼくは許してあげたいと思った。
「あと、さっきの言葉、嬉しかったです」
「え、ああ、あれは忘れてくれっ」
今頃恥ずかしくなっても遅いのだが、やっぱりさっきのは恥ずかしすぎる。
あれじゃあまるで衝動告白じゃないか。
焦っている姿を見て祀木
は笑っていた。
「僕も好きですよ、先輩」
そして恥ずかしそうに言う彼が愛しくて仕方ないと思ったのも、どうしようもない真実だった。
even if
(お前の全てが好きなんだ)
(影になったとしても、ね)
――――
やっとできました!
キリリクのクリスと影化した祀木″です。
ていうか、ぐだぐだし過ぎだって話ですよね。
栗祀だねコレ。
シリアスだねコレ。
栗須に「祀木の全てが好きだ」って言わせたかった←
きっと皆戻ってくるまでイチャイチャしてるよww
couri様のみお持ち帰り可。返品も可です。