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□表裏一体感情論
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栗須side
あの12月からぼくはずっと暗い学校に閉じ込められていたわけだけれど、今はこうして祀木に再会できたし新しい仲間にも会えた。
気が遠くなるほどの苦痛と隣り合わせだったぼくには、それがどうしようもなく嬉しかった。
「ねぇ…祀木」
「何ですか?」
「ぼくはおかしいのかなぁ」
何処がとは言わずに聞くと祀木は不可解そうに眉をひそめてぼくを見た。
「抽象的でわかりません」
流石というか何というか、最もらしいこと言ってくれるよな、彼は。
そこは二年前から全く変わってない。可愛い後輩のまま、というわけだ。
初めて生徒会室で会ったときには一年生だった祀木、一年上のぼくに"校則違反だ"と注意する程の真面目な奴だった。
「最初はね、こんなはずじゃなかったんだ」
こんなはずじゃなかった。
二年の間に心に決めていた復讐心、祀木に同じ目にあわせてぼくがただ一人で脱出してやろうと思っていたのに。
「ホントはお前を恨んでたはずだった」
呟くように発せられた言葉に祀木は瞬間的に顔をしかめた。別にそんな顔をしてほしかったわけじゃないんだけど。
「今度はお前を裏切って見捨ててやるって」
でもね、よく考えればおかしいんだよ。
次に会ったときは同じ目にあわせてやるだなんて。
まるで助けに来るとわかっていたかのような。
助ける以外の理由でわざわざこんな危険なところに戻ってくるはずはない。
それでもそう思ったのは、復讐心の中のどこかでまだ祀木を信じていたからなんだ、って考えたら妙に恥ずかしくなるというか。
「でも祀木はそんなぼくを助けに来てくれたね」
ありがとう。
あと、ごめん。
ぼくは自分のことで手一杯だったのに、祀木は正義感が強い奴だな。
そう言ってぼくより少しだけ背の高くなった祀木の頭を撫でてやると、祀木は今にも泣きそうな顔で綺麗に笑った。
表裏一体感情論
(裏切りと信頼は正反対で)
(だけど繋がってるらしい)
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