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□すれ違う心
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ここ一ヶ月、池袋は不自然に『平和』だった。
平和、というのは標識や自販機が、宙を舞う回数が極端に減ったからだ。
そう、静雄と臨也の命懸けの鬼ごっこという名の戦争が行われていないせいだ。
しかし、片方が池袋に来ていない訳では無い。
もう片方―――静雄が一方的に無視というものを実行しているからだ。
静雄には臨也専門の鋭い聴覚と嗅覚が備わっている為、その気になればすれ違ったり、鉢合わせしたりということは未然に防げるのだ。
あちら側はこっちを嫌っているので接近される心配もないのだ。
何故、そんなことをするのか。
それは、静雄が臨也に対して恋心を自覚したためである。
恋というのは人を変える。彼も例外ではない。
彼の変化に臨也が気付き、万一恋心も悟られたら困る。
普通は異性に恋をする。
静雄も臨也も男だ。
同性愛者など気持ち悪いだけだ。
"この気持ちに気付かれたら今までのように接せない。きっと奴は俺と距離をとるだろう。
そんなのはイヤだ。でもいつかは来るだろう。奴は勘が鋭いから。
なら…なら、こちらから距離をとろう。いつか来る別れの痛みを和らげるために―――"
彼が必死に考えて辿り着いたのがコレだった。
《離れる》
今の彼にはこうするしか出来ない。
が、
(なんでこうなってるんだ…!?)