短編

□For or all your faults, I love you.
1ページ/15ページ







雨の湿気を孕んで、風が屋上を吹き抜けてゆく。

放課後の静かな校舎に6時を知らせるチャイムが鳴り響き、生徒がいないがらんとしたしろいコンクリートの城を震わせた。

そして、その音は夕日のシルエットを背負う城を中心に、反響することもなく同心円状に広がって、すこし小高い所に建つ城の下の商店街へ、そのまた向こうの住宅地へと舐めるように、なだらかに、淡く、溶けるようになじんで、やがてすうと消えてしまう。

いつものざわめきはその城には一切なく、そのイメージに、なお城の静けさは淋しく、寒く、異様で優しい。

音が溶け合う空の色は茜色。

欠伸が自然と出てきて、生理的に出た涙で茜の世界は軽く滲んだ。

うとうとと、滲んだ世界を、
優しくて、悲しくて、切なくなる世界を、
茜色の世界を、

見上げる。


今、空は過去を見せる。











次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ