二次創作

□とある悔恨
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俺がそいつの存在に疑問を持ちはじめたのは、中学の3年に上がるくらいだったか。

今まではただ、言われた通りに見ていただけだったのに。

男にしては、大きなどんぐりのように丸くて大きな瞳。ふわふわの、柔らかな髪は、染めたような人工的な色ではなく、チョコレートのような、枯れ葉のような優しい茶色で、光の加減によれば時にそれは金色に見える。桜色の、小さなぷっくりした唇に、遅い変声期前の高い声。

そんなカッコイイよりカワイイ、が似合う男子中学生は、案の定というか、当然というか、まだまだ乳臭さの残るクラスメートには馬鹿にされた。それを助長するように、そいつは勉強もダメで、運動もダメ。典型的なドジり屋。失敗した時に、頬を染めて涙を大きな目に貯めて悔いる姿は幼い中学生にひどく嗜虐心を煽らせて、そいつが失敗を繰り返すごとに、小学生じみたイジメをクラスで行っていた。

もちろん、俺も例外じゃない。

勉強が出来ないこと、運動が出来ないことを笑いながらなじった。
返してくる、その反応が、見たくて。

でも、いつからだろう。
いつからか、今までふわふわしていたそいつの存在が、真ん中に何かの軸を通したみたいにしゃんとしだして、相変わらず勉強も運動もダメダメなのに、逆らえないような、ついていきたくなるような、ある種のカリスマ性を醸し出したのは。


怪しい黒いスーツのがきんちょがうろうろしだしてから?

ダイナマイトふりまわして爆発させるとんでもない不良少年が現れたから?

学校で一番人気の野球馬鹿がかまいだしたから?

おっかない風紀委員長が何かにつけて追い回していたから?

うるさい極限ボクシング男がクラブに無理矢理いれようとしたから?

他校のかわいい眼帯の女の子が似合わない三叉槍を抱えて一緒に帰ったりしたから?


変化は常に緩やかに、でも確実に。
そいつは、沢田綱吉は、俺の思考から離れなくなっていった。



『とある同級生の悔恨』









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