二次創作

□宛先間違いの手紙
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※捏造
※時間軸的には10年後綱吉が死ぬ前ぐらい。





どうして気がつかなかったんだろう。
いや、違う。
多分、分かっていたんだ。
おまえがいこうとしていることは。
分かっていたんだ。
だから、
気がつかないふりを
必死に、
必死に、
していたんだ。
この想いに
気がつかないふりを。


気がつかないふりを。




夜の帳がおりて、やがて闇色が世界を覆う。そして、生まれた光は果敢無い存在感で静と世界にある。闇の住人が動き出す時間。
そんな世界の中で、その淡いランプの光はそこにあって、二人の人間の陰を伸ばしていた。草木さえも眠りについた夜に、二人はいる。

それくらい、そう思えるくらい、二人は二人の世界にいた。

一人がニヒルな笑みを浮かべて、もう一人を見る。




突然の真夜中の客を綱吉はため息と共に迎え入れた。黒い衣に包まれて、まるで夜の化身のように悠然とそこに佇む少年。

彼が来た理由なんてわかっている。


「ったく、相変わらずのダメツナだな。ある意味変わらなさすぎて安心しちまうぞ」

「………どういう意味だよ」

「言ったまんまの意味だぞ。他意はない」

「嘘つけ、有りすぎだ!!」


少年の姿をした黒が、年齢に似合わない仕種で肩をくつくつと揺らした。そのくせやけに様になっている。それを苦々しく思い、じと、とした視線を送ってみるが、軽く肩を竦められただけで。舌打ちをしそうになるが、堪えた。生意気だとねっちょり虐められるのは目に見えている。

ちょっとミスをした。
無くしちゃいけない書類があって、それを紛失してしまったんだ。

最近、寝てないから、ちょっと机の上がごちゃごちゃしてたんだ。仕方ないじゃないか。なんて言い訳を連ねても、通用しないことはこの10年ちょっとで文字通り痛いほど身に染みて学んだ。


「あーもっ、オレ、ちょっと寝るっ。もう七日もまともに寝てないんだ。ちょっとくらい寝たって、いいだろっ」

「なんだ。せっかくオレが来てやったっていうのに。」

「わりとしょっちゅう寄り付くだろ」

「まーな。………いつころっと逝っちまうかわかんねーからな」


さらりとそう言った漆黒の死神に思わず言葉がつまった。
何でもないかのように、平然とした表情が少し憎たらしくて、言葉が出ないことに、苛立ちを覚えた。
どうして、そんな事を簡単に口にだしてしまうのだろう、こいつは。
ばかやろう。
オレが7日間も寝ていない理由をお前は知っているだろう?


「………体、辛いの?」


悔しい。言いたいことはたくさんあるのに、それが一つも口にだせなくて、掠れた声が、だけが喉を震わせた。


「大丈夫だぞ、おめーがボスの仕事をきちんとすればな」

「………なんだよ、心配してやったのに」

「おめーがオレの心配するなんざ、100年早いぞ」


漆黒の瞳が、さらりと動いて、綱吉を捕らえる。綺麗だな、と思ったらその瞳から目を離せなくなった。黒い奈落の底のように、吸い込まれそうな黒い瞳。淡いランプの光がそこに反射して、小さな光を点す。星空のようだなんて、自分の語学力の弱さに辟易するが、じっと見つめていると、本当に星空を眺めているようだ。

広い執務室。これでも狭い方だと、10年たっても忠犬の態度を崩さない右腕がそう言っていた。柔らかい高級そうな絨毯は、真綿のように優しく愛しくその空間を包んで、締め付けられていることに、息が苦しくなっていることに、気付かせてくれない。
その中で、二人。

ランプの暖色の光だけが光源で、その広い部屋に長い長い陰を伸ばす。

沈黙が、部屋をカーテンのように外から見えなくする。厚い静寂のベールが何層にもなって、今ここにいるのが自分達だけなんだといやがおうでも理解させられた。

きっと、あの黒い瞳が綱吉の気持ちを奪い取ったように、言葉さえも掠め取っていってしまったのだろう。

長い陰が、ゆらりと動いた。
一歩、一歩、確実にゆっくりと綱吉のいる机に近づいてくる。

リボーンが手をついた机が少しだけきしりと音を立てた。瞳から目が離せないまま、リボーンの手が伸びて、オレの頬にそえられるのを感じる。
首筋から流れるように頬へ。

さりげないタッチに、びくりと肩が揺れた。

「リボーン、」

「黙ってろ」


体をさらに倒してくるが、如何せんリボーンの背丈より机の長さが勝ったらしい。それ以上進めないことに気がついたのか、悔しげに眉を寄せた。

思わずオレは、柔らかい革張りの椅子から、自身の地位をこれでもかと主張する黒い豪華な椅子から腰を浮かせた。


「いやだ、黙れない。」


リボーンの手に、自分の手を重ねる。そしてしっかりと握りこみ、引き寄せた。

まだ少年のリボーンの体は、思いの他簡単に引き寄せられて、オレはそこに自分の顔も寄せる。

触れ合ったのはほんの一瞬。
だけど、相手の柔らかな感触が分かるほどにはしっかりと。

唇を合わせた。


「、リボーン……」

「っ、ダメツナが、生意気だぞ。」


リボーンが机の書類を無視して、その上に乗った。そして中腰の状態になったオレをぎゅ、と抱きしめた。あまりにきつく抱きしめるから、息が苦しくなったほどだ。


「ツナ、」


切なげに発せられた言葉に、どき、と胸の何処か深い所が痛くなった。
だけど、鈍すぎるその痛みに、気がつくことはこの時はなかった。

後で思えば、オレの血の超直感が何かを伝えたのだろう。いや、もしも伝えられたとしても、オレがリボーンの考えてることに気がついても、きっと、オレは……


「お休みだぞ、ツナ。寝るんだろう」

「…………うん。」


唐突に体が剥がされて、二人の間に風が通った。寒いな、と思った。リボーンの子供特有の体温が離れたことに対する寒さだと、その時は思ったのだけど。

黒はあっさりと扉に向かって歩きだした。
オレは、ただその背中に一言声をかけるだけ。


「お休み、リボーン。ぐっすり」


リボーンは扉に手をかけたまま反対側の手でひょい、とボルサリーノを浮かせただけで返事をする。

オレはただ、その背中を見送る。





リボーンの訃報を聞いたのはそれから暫くしてからだった。
単独、ミルフィオーレに乗り込んでいったらしい。
アルコバレーノは、これで全員が行方をくらまし、あるいは死んだ。


「小動物。なら、いいんだね?」

「綱吉くん……」


雲雀さんと入江がボンゴレ10代目に最終確認をする。
綱吉は、あぁ、と少し赤くなった目で言った。

出来れば、避けたかった。
過去の自分達を巻き込むようなことは、自分達の時代の尻拭いをさせるようなことは、出来れば避けたかった。

でも、そうしないと
この世界のリボーンが還らないと言うならば、

綱吉はそっと唇を手で触れた。
柔らかい感触。
最近また寝ていないから少しかさついている。それが少し気持ち悪くて、れろ、と舌を出して舐めた。切れていたのか、すこしぴり、としみた。

リボーンが帰ってくると言うならば、

瞳を閉じて、潤いを持った唇に、再びリボーンのそれが重なることを祈る。
背中に回された腕の感触を思い出す。
心はこんなにもリボーンを思ってる。

オレは、何でもしてやる。
一度でも、二度でも、死んでやる。
リボーンが還ってくるならば。


「獄寺くんを呼んで。……いや、皆呼んで。」

「いいのかい、綱吉くん。確実だって断言できないんだよ。」

「いいんだ、入江。これはオレが決めたことだよ。」

「そんなにあの赤ん坊が大事?」

「…………そうだよ、雲雀さん。」

「盲目だね。」

「オレ、ダメツナだから、何か理由がないとダメなんだよ。」


綱吉は、黒い豪華な椅子から立ち上がり、窓にたった。
防弾ガラスの分厚いそれは、外の景色をやけに歪めてみせる。

果たして、本当に窓のせいで歪んで見えたのかは、わからない。

綱吉は振り向き、二人に笑いかけた。


「リボーンを取り戻したいんだ。ね、二人とも………力を貸してよ。」

ボスとしての地位から下りて、綱吉は綱吉に戻って、二人にお願いする。

雲雀はくすりと、入江はまだ戸惑ったように。

二人はこくりと頷いた。






ボンゴレ10代目の訃報の噂が囁かれたのは、それから暫くしてからだった。


「うらやましいね、赤ん坊。やっぱり君だけなんだ。あの草食動物にやる気を出させるのは。」


綱吉の”死体”が入った棺桶にそっと手を這わせる。別に、リボーンのそれの傍に置いてもよかったのだが、この計画を共に進めているのは自分だという独占欲みたいなのが湧いて、この静かな森の中にした。

立ち上がり、空を眺める。遠くを見る。


さぁ、おいで。

はやくおいで。

10年前のボンゴレファミリー。


まだ世界の黒さも深さも何も知らない君達に、綱吉は期待しているんだよ。
リボーンを取り戻してくれるって
信じてるんだよ。

だから、

はやくおいで。



ランボの頬っぺたマーク




リボツナ推奨二次創作第2弾です。
かなり妄想が入ってます。
捏造も捏造、本当何やってるんだか(笑)

でも書いてる間はすごく楽しくて楽しくて、ルンルンでした!!

拙い文章で本当申し訳ありません。

でも調子こいて、第3弾も考えてます。

パロディもかいてみようかな。


もし、お気に召しましたらメールや拍手などを頂けたら励みになります。


















 

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