二次創作
□調査物T
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『どうして。』
暗い部屋だ。ごうごうと重い音が部屋の壁や障子を揺らして不穏な音をたてさせる。もう、すぐそこまで来ているのだ、あの不穏と不安を撒き散らす音は。凄まじい風に、滝のような雨、そして徐々にその量と流れと速さを増していく川。それらの音が全部あわさって、恐ろしい音を立てているのだ。
あの川はもうすぐ溢れて溢れてここまで迫ってくるのだろう。畳みはここ数日降りしきる雨のせいですっかり湿っていた。その上で座り込み、呆然と自身の膝を見つめる。正座は苦手なはずなのに、すぐ崩してしまってよく怒られていたのに、今は何故かこうしていても足が痺れることがない。感覚がないんだ、と頭のどこかで誰か、いや自分が囁いた。
あの音が迫る。逃げないと、とその囁きは言うのだけど、動かない、いや動きたくないのだ。
『どうして。あいつが、命を睹して守っているのに、どうして。』
『………どうして。』
ぐるぐると疑問の声があがるのに、状況はますます悪くなる一方だ。たぷ、と床下から水が揺れている音がする。もう、すぐそこまで迫っているのだ。ここは水没地域……この調子なら、自分がいるこの部屋は沈むだろう。あいつが守るって言ったのに。だから、送り出したのに。
『……………うそ、だったのか』
うそ。あいつが命を賭けたのに?
どういうことだ?
奴らはうそをついたのか?
村のためだというから、
あいつが望んでいるというから、
だから、
あぁ、どうして!!
こんなことになるならば!!
決して、決して、決してっ
決して!!みすみす死なせたり、……………………殺させたり、しなかったのに。
たぷん、と部屋に水が満ちてきた。多分村の人間はもう逃げているはずだ。
あいつを殺したやつらは。のうのうと生き延びているはずだ。
許さない。
許せない。
なぁ、お前も許せないんだろう?だから、こんな風にしたんだろう?
自分を殺して、そして、逃げ出した村の奴らに。怒っているだろう?恨めしいだろう?
一緒に、いくよ、ぼくも。
そして、なぁ、そして。
一緒に………
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