二次創作
□紅茶はいかがですか?
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「麻衣、お茶」
「……………はいはい今すぐー」
「はいは一回にしろ」
「はーい」
相変わらずなんだから、もー。
扉開けて、こんにちはー!っていったとたん、この黒ずくめ黒髪毒舌ナルシスト男は!あんたはあたしを見たら茶しかでないんかい!
久しぶりとか元気だったかの一言が欲しいよー
そう、やっとイギリスから、ナルとリンさんが帰ってきた。今日は久しぶりにここ『渋谷サイキックリサーチ』もとい『SPR』日本分室に来たのだ。
「少しは寂しかったの一言はないもんかねー」
まぁなんだかんだ言っても今日はせっかく久しぶりにあったんだから、ちょっといいお茶を。お湯で少し温めたポットに茶葉をいれて、ふわりと紅茶のいいかおりが部屋に溢れる。ついでカップの方もお湯を少しいれておき温める。
「あぁ、お久しぶりです。」
「こんにちはーお久しぶりです、リンさん。」
さすがリンさん。大人だー。ってか、普通言うべきもんだろうけど。
「私にもいただけますか。」
「はーい」
「紅茶を飲むのも久しぶりです。」
「?向こうでは飲まなかったんですか?」
「ナルが飲みたがらないもので」
「どうして?」
温まったカップに琥珀色の液体をそそぎ入れた。解放された香が、部屋中に躍りながら広がる。やっぱりいい茶葉はいいなぁ、と思う。
「さぁ、私には」
「ですよね」
どうぞ、と紅茶のカップをリンさんに渡す。低い声でありがとうございます、と言うとゆっくりと流し込む。
「美味しいですね」
「よかった」
にこ、と笑うと、あのわがままな王様所長に持って行こうと盆を出し、紅茶の白いカップを載せた。紅茶のカップの内側が白いのは、その美しい色を味だけでなく楽しむためらしい。あまり、詳しくはないけれど。
「……聞いてみるといいでしょう」
「?何をですか」
「向こうのお茶は美味しかったかと」
それだけ言うと、さっさと資料室に篭ってしまう。何なんだ。
「そんなの、聞いてどうすんだか」
所長室の扉をこんこんと叩き、返事を待たずに入る。すると、ナルは椅子に腰掛けたまま、くるっとこちらに向きなおした。
「遅い」
「はーい、ごめんなさーい」
かちゃ、と紅茶を机におくと、くる、と踵を返した。……まだ、まだナルの顔をよく見ることが出来ない。その綺麗なナルの表情にジーンの笑顔を探さないように。
リンさんも言ってる事だし試しに聞いてみようか。
「向こうのお茶は美味しかったんじゃない?何てったって本場だしね。」
かちゃ、と陶器が微かな音を立てている。ナルがカップを近づけるのが気配で分かった。何だか、ちょっとどきどきするな、なんて思ったその時。
「向こうでは飲んでいない。」
「…………どして?」
「………まずかったら、怒るつもりだった。」
「まずくなかったら?」
再び、陶器の音が部屋に響いた。しんとした部屋に、やけに大きく響いたその音は、びくん、と麻衣の体を緊張させる。沈黙が部屋を支配する。出ていけないし、かといってここでぼぅっと突っ立っていてもなぁ、というぐらいの時間が過ぎた。
「おかわり」
「はや?!」
麻衣が空になったカップを盆に乗せた。丁度、所長室のドアがこんこんとノックされる。麻衣はリンと入れ代わりに出ていく。
「リンさんお茶おかわりいります?」
ついでだからとリンにもお茶のおかわりの有無を確かめたのだが、何故かナルが答えた。
「麻衣、さっさとしろ」
「もー、わかったよー。わがままなんだから。」
スリッパの軽やかな音が過ぎ去る。リンはくす、と静かな吐息の笑顔を見せた。ナルはただ、不機嫌そうにリンの笑顔を睨みつけた。
「素直にならないことには、ジーンには勝てませんよ」
「何のことだ」
「谷山さんはあぁ見えて鈍感な部類に入りますからね……はっきり口にしないと気が付いてもらえませんよ」
「………………。」
ナルは不機嫌な顔にさらに眉間にシワをよせ、手元の書類に目を通す。するとそこには
『I think so, too.』
ナルは、ふぅと重いため息を漏らした。扉の向こうではぱたぱたと忙しなく走り回る音がする。誰か来たのだろうか、女の子らしい高い声が聞こえてくる。
言えるわけがない。
ここの、麻衣のいれたお茶の香と味を忘れたくなかったから、消したくなかったから、飲まなかった、なんて。
言えるわけがない。
いいえ、いりません。忘れたくない味があるから。
♪♪♪♪♪
ナル麻衣ファンの方、本当に申し訳ございませんっ。でも、なんだかとても楽しかった〜
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