まほろく

□第1精 藍色の空
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 出夜姉様……

 知らずのうちに、私の声は甘く、甘えたものになる。

 私はさらに手を褥の奥へと差し入れる。ふと、何かが手に絡みついて来るのを感じた。
 怖い感じはない。私はそれ知っているから。私の細い指に絡みつく神経質なもの。細くなく太くなく、ちょうどいい。私はそれを好いていた。

 好いていた?
 違う、愛していたの。

 ふふ、………くすぐったいわ…

 おいで、おいで出朝。
 大切な僕の妹。
 大事な僕の妹。
 愛すべき、僕の、妹。

 出夜姉様…お顔を見せて。

 絡み付くそれの粘度が増す。
 手の形を確かめるかのように、それは、私の指の一本一本に触れて、手の平も舐めるように、じっとりと触れていく。

 嫌な感じなんてしない。

 互いになくてはならないものの様に、執拗に互いに絡み合う。

 いや、きっとなくてはならないのだろう。少なくとも、私には。

 私は大きく身を、布団から乗り出した。すでに肘まで褥の下に入っていたが、さらに奥深くへと腕を差し入れる。
 冷たい暖かさを求める、姉様を求める。


 ――決して、手を差し入れては、


 私は姉様会いたさに褥をひっくり返した。私の異様に長い髪の上に、飛んできた枕が滑る。

 姉様、姉様会いたかった
 私すごく会いたかったの

 僕もだよ、かわいい妹。

 ぼっかりと、あいた暗い穴。暖かささえ感じられるほかぽかとした暗い穴。たゆたうは、その、人の想いとかいうもののカケラか。


 だから私の元に貴女は来たのか、それともただ純粋に私を憎んでいたのか。
 ただ、私を、怨んでいたのか。









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