まほろく
□プロローグ
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†プロローグ
いない、いない。
あの子がいない。
どこにいるの?
野蛮な亜神がいる東の果ての大きな大陸…≪楽園≫も、西の果ての≪秘密≫も、南の果ての≪出入口≫も、北の果ての≪奈落≫も。
≪真ん中≫も。
全部探したのに、あの子がいない。
ねぇどこにいるの。
あの子の魔力の残滓を追っても、いない。
あの子の綺麗な碧がない。見当たらない。姿が見たい。
僕は危険な奴だから、あの子がいないと自分を抑える事がきっとできない。
意地悪しないで出て来て。意地悪なんてあの子には似合わない。
優しい君には似合わない。
ねぇ、おねがい、君がみたい。
ねぇ、おねがい、僕に微笑んで…。
ひとしきり世界を飛び回って、翼がぴくりとも動かなくなるまで疲れはてて、僕はまた≪真ん中≫に戻ってきた。
微かに香る、感じるあの子の気配に引き寄せられて。
あぁあそこは…懐かしい。かつて僕らが住んでいた土地だ。
君と僕と、それから………。
≪真ん中≫と呼ばれる箱庭のような世界の、西の大国魔神宗教大国ラルド。そこに白い影が羽ばたいて行く。
ただ一心に君を求めて。
しかし、それは誰のため。