聖禍学園記

□血染め、闇染め
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 コンコンとガラスに硬い骨が当たる音がした。
 俺の体は面白いくらいに跳ね上がる。
 緊張に跳ねる心臓を持て余しながら、息を潜め俺は外の奴が何をする気なのかを探る。
 でも、その反面、この異形の来訪に喜ぶ自分もいるのを、感じられずにはいられなくて、さらにいらいらとしてしまう。

 「夏夜〜僕だよ。居るよね?」

 軽い調子の声。あいつのだ。
 ぎり、と唇を噛み締めた。先日噛まれた首筋が熱と痛みを訴える。
 いや、正確には、熱と痛みと快感とを、だ。
 
 「開けて。続きをするんでしょ。」

 いやだ。
 だけれども体は意に反して窓に近づいた。指が、言うことを聞かない。鍵を空け、窓をゆっくりと開ける。

 これも、あいつの力なのだ。
 あいつに襲われてからというもの、昼は、貧血が起こって一日中床に臥せているのだが、夜になると、あいつがくる時間になると、とたんに体が動くようになり、あいつの命令が絶対だなんて考えてしまう。

 夏の夜の空気がさあと吹き込み、部屋の中を少し涼しくした。
 しん、とした夜。ざわめきは木葉がかすれあう音。
 白が不意に姿を現した。

 「………………っ。」
 「やぁ、おはよう?いや、人間では今晩は、かな?愛しの夏夜くん。」

 ぎし、と窓をきしらせて、そいつは両手をかけた。
 それは、確かにそいつが幽霊ではなく、ここにいるという証明。身軽に窓から中へと侵入してくる。

 「怯えてるの?くすっ…かぁーわいー。。鳴かせたくなるね。」
 「………。」

 絶対的な威圧。
 圧倒的な存在。

 自分よりも小さな男から。

 いかに、自分が小さいのかを思い知らされる。










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