短編

□For or all your faults, I love you.
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□2■

 愛とか、恋愛とか、一目惚れとか、彼氏とか。

 酷く曖昧で、形や証明書みたいなのが無くて、わけわかんない雲を相手にしているようなものだと思う。

 どうしてそんな不安定なものに体や心を預けなければならないのか。
 体を傾けた途端に、そこが崖だと気付いて、落ちていってしまったりするのがこわくないのだろうか。
 そもそも、その人を本当に本物の意味で愛していると言えるのか。
 だいたい、その思いは、果たしでそうして恋をしている自分゙に酔っているだけじゃないとしっかり言い切れるのか。

 これだけの事をクリアして、好きだと言える人を貴方は手に入れている?

 そして、裏切られないと言い切れる?

 私はだめだった。

 そうだと思った人に信じた人に、思いっきり浮気されていて、しかも、自分は捨てられていた事に気がついたのは、浮気相手がすでに浮気相手じゃなくなった時だった。

 どうして、

 今でなら笑える台詞。相手に説明を求める、自分では考えない台詞。
 それを使って、相手に迫った。
 説明を求める時に多様されるその言葉を。

 ごめんな、鈴子。

 本当はわかっていたんだ。
 肌を見せ合った夜から、彼の私に対する行動に歪みがあらわれていたのは。

 一時は同じだと思っていたのに。
 同じものを持つ、仲間で恋人だと。

 だけど、彼は、私から逃げたのだ。


 生きるのが苦しいって、こういうことなんだ、とやけに納得した。
 味がなくって灰色。
 授業も、先生の話も皆の話も頭に入らない。

 そんな時に彼と出会った。

 ある日、私はしなくてはいけない課題をすっかり忘れていて、居残りをくらっていた。
 はやくしないと、6時のチャイムがなる。あの物悲しいチャイムの音は、一人では、しかも私の今の状態では聞きたくなかった。

 日が傾く。

 手元が暗くなって、仕方ないので明かりを付けようと、席をたった。
 そして飛び込んできたのは。

 とても赤い赤い世界。
 太陽が沈もうとしていた。
 夕日だ。

 赤くて美しくて寂しくてせつない世界。

 私はそれを近くで感じようと、教室を飛び出した。

 赤い世界を体いっぱいに浴びることが出来るのは何処?

 頭の中で質疑応答が繰り出される。

――――――――屋上。


 わかった、と私の体は階段目指して走り出した。


 ぎい、と、金属の重い扉を開けると、そこは爽やかな風が流れる赤い空が広がっていた。人は高い所に昇りたがる。なぜだろう?
 今ならわかる。
 この世界との一体感がとても素晴らしいからだ、と。

 私はふらふらとフェンスに近づいた。胸までの高さのフェンスから身を乗り出し、夕日にすこしでも近付こうとする。
 手に、暖かい光を感じた気がした。
 あと、すこし……!!

 「おい、やめろ!!!!」

 背後で鋭い声がした。驚いて、私はぎりぎりのバランスで保っていた体が傾くのを感じた。









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