お話

□高い塔
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それはそれは高い塔だった。ラプンツェルの塔なんか比にならない、ヒマラヤ山脈よりもマメの木よりも、挙げ句の果てには神よりも高い塔だった。
その塔には世界の360度が見えていた。地上と天上の悪事を見張り、罰をも下した。窃盗が起これば太陽光をスポットライトのように当て、犯人を見つけやすくしたし、無差別殺人を起こした犯人には大きな雹を落としたこともある。高い塔は正しいことと、みんなの為になり頼られる事を望んでいたし、それはもうずっと前から叶っていた。



高い塔


あるところに荷物運びのロバがいた。このロバの飼い主は腕の立つ医者であった。この前は公爵の心臓移植を成功させたほどである。名誉も財産も全て持っている、とても有名な医者なのだ。

ある時、世界の果ての国が伝染病で滅びそうになっていた。マズイ思った。その国には優れた文化と、子ども達の大好きなお菓子の材料がいっぱいある国だったからだ。医者は自ら志願してその国に向かって歩き出したが、余りに膨大な薬の量に担いで行くなんて倒底無理というものだ。そこで荷物持ちに任命されたのが、力持ちで心優しいロバであった。
ロバはとても喜んだ。なんたってあの有名な医者に車でも飛行機でもない、ロバが任命されたのだから。ロバを仲間にした医者は早急に準備を終わらせ、2日経たないうちに世界の果ての国へ出発した。


彼らは今、砂漠にまで突入している。この砂漠を抜ければ後は半日も歩かずに着くのだが、この砂漠がとても広く熱く空気が煮え返っていた。
もう10日は歩いただろうか、荷物持ちのロバはへとへとであった。
高い塔はロバを不憫に思った。ただでさえ辛い砂漠越えを、数十キロもある医療器具や薬を担いでなんて拷問のようである。ロバの視界はいつもグラグラと揺れていた。
そこで高い塔は雨を起こした。医者とロバは空を見上げ歓声を挙げ喜んだ。これで砂漠越えが少し楽になるだろう。そして医者に1発の雷を落とした。
医者は即死であった。ロバは雨よりも大粒で、大量の涙を流した。高い塔は訳が分からずロバに問いかけた

「なぜ泣いているんだ?お前を死より過酷な刑に科していた奴がいなくなったんだぞ」

ロバは毛を逆立てながら高い塔に怒鳴りつけた

「なんて事をするんだ!!彼は大事な友達だったのに!!」

高い塔は理解出来なかった。そして声を響かせてこう聞いた。

「お前の言う友達は君を苦しめるのか」

ロバはもう憤怒していた。頭に血が上りすぎてクラクラしそうだ。

「違う!!あの国は環境汚染で伝染病が流行ったんだ!!この砂漠だって前はこんなに広くなかった!!だから医者は車とか飛行機を使えなかったんだ!!」

そしてロバは世界の果ての国に向かって猛スピードで走り出した。砂漠の終わりがもう少しで見える。
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