お話

□星くず
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その時僕らが描いた夢は海を星くずでいっぱいにしようというものだった。
海の中にも生き物がたくさん居るのに、ケーキもテレビもキャンバスも無い。何が楽しくて何億年もの間そこに遺伝子を残してきたのやら。
だから僕らはあの陰湿な海中を光で満ちあふれた楽園にしようと計画を立てたんだ。


先ず潜水艦を作ろう。
念と勇気で動けば良いんだけど、やっぱり燃料は必要だろ?
それと沢山のライト。もちろん防水性のやつさ。それを持って行こう。光るから星のようだろう?
本当の星は持って行けないからね。そうしたら僕らはロケットの開発もしなきゃ駄目だ。そんな事してたら、あと何年懸かると思っているんだい?誰かに先を越されてしまう。だから電気を使うんだ。火は消えてしまうしね。僕らはナポレオンをも超える英雄と成るのさ!!


潜水艦は直ぐに出来た。設計図はあったんだ。インターネットを使えば直ぐに見つかるよ。材料集めは少し大変だった。あの産業大国が横暴で独占的なものだから、網の目より細かい計画を練ってなんとか集めた訳さ。ああ本当に大変だった。でも、もう直ぐ僕らはヒーローだからこんな苦労どうってこと無い!

あの星形をかたどった潜水艦に乗り込んでみよう。





ゴポポ…ゴポポポポ…


ああ深い。海が、青が。海中から見た空はきらきらしているんだ。でもやっぱり海底は冷たくて真っ黒だ。床にだって星くずが欲しいだろう。それにキレイなものは何処にいったって喜ばれるよ。


図鑑に乗ってたクジラも水族館で見た魚も、食卓に上がった貝でさえも僕らの目には何千何万もの生物が目に入った。人魚姫はさすがに見当たらなかったけどね。


そろそろライトを埋めよう。20個近く埋めたところで亀に声を掛けられた。僕らの計画を聞き終えずに一喝された。

なんだよ、なんだよ、これはお前たちの為になる計画だぞ?勿論僕らの名を海底に広げたいのもあるけど…

どんどん海の魚がクラゲがオットセイが鮫まで集まって来ちゃった。
僕らの素晴らしい星くず計画を聴いても誰も賛成してくれるやつはいない。なんで!?しかも追い出そうとしてくるじゃないか!?
鮫が最後に出ていけって言ったけど構わずにライトを埋めていたらずっと僕らは海から出られなくなった。

それからそれからずーっと経って水が資源と成った時、僕らのそして君たちの孫達は海に山にそしてジャングルに色とりどりなプラスチックや金属や機械を置いて行くようになった。

僕らの星くず計画は叶ったけど、今なら亀や魚たちの言っていたことがわかった気がしたよ。



結局はいつの時代だって考えることは換わらないのさ。自分が一番正しいし可愛いの!それを止めるやつが居るか居ないかさ。
でもね、今は天下の人間様だから、いや天上かな?だからきっとみんな逆らわない方が良いかもね。

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