D灰

□手当ての王道
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こんな態度を見に俺はわざわざコイツの部屋を訪ねたんじゃねぇ。
これだけ熱があれば、さすがのピエロも弱ってると思ったんだが・・・。
見当違いだったようだ。つまらねぇ。


「神田が何を期待していたのかは大体予想出来ますが、残念でしたね。峠はとっくに越えましたので、今はもうほとんど治りかけですよ」


モヤシはいつもの毒舌で俺に悪態をつくが、やはりその上辺だけの笑みには覇気が見当たらねぇ。
俺はそんなモヤシの態度をおもしろく感じ、嫌味な笑みを浮かべてやった。


「・・・何ですか」
「テメェがここまで弱ってるのを見るのは、なかなか良い暇つぶしになるな」
「悪趣味な」


行儀の良い英国紳士は、俺の言葉へあからさまに舌打ちを返す。
気分が悪くなったのか、似非笑みを浮かべるのをモヤシはやめた。
逆にそれを見て俺のイラつきが軽く減少する。


「で・・・いったい貴方は何の用事でここへ?」
「弱ったモヤシを見に」
「殺す」
「今のお前に出来んのか?」
「黙っといて下さい。今僕、凄く気分が悪いんです。誰かさんのせいで」
「俺のせいかよ」
「他に誰が居るんですか」


モヤシは明らかに怒気をはらむ笑みで俺を見る。
さっきの顔よりはいくらかマシだと思った俺は、文句を言わずにモヤシの挑発を買ってやった。


「・・・俺がお前の風邪を治してやろうか」
「はい?」


俺の言った言葉の意味が上手くつかめなかったのか、モヤシは間の抜けた声を発して俺の行動に素早く動けなかった。
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