D灰

□夏に入りました
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くじ引きで公平に決まった結果、アレンはラビの物を、神田はリナリーの物を、ラビは神田のを、リナリーはアレンの物を隠すことになった。
隠し場所は教団内ならどこでもいいということだったが、それでは見つかる可能性が低いので、その人の物を隠し終えたら、持ち主に隠し物がある部屋だけをゴーレムを通じて教えるということになった。
教えてもらった時、たとえ真反対側にいたとしてもそれは自己責任となる。
その場合、暗い教団内を頑張って歩くしかない。
時計の針が正午を示したのを合図に、アレン達は散っていった。
神田は早く終わらせてアレンのところに向かおうとしているので、談話室からあまり離れていない場所でリナリーの物を隠した。
ちなみにリナリーが探すのはアニタさんからもらった大事な形見だ。
神田はすぐさまゴーレムでリナリーに隠したことを伝える。


「隠した」
『はやっ!? てことは相当近くね。分かった』


通信が途絶えると、神田はすぐさまアレンを探し始めた。
神田から目を離して、次はラビを見てみよう。
ラビは談話室から真反対方向に向かって歩いていた。
普段は通ることのない道なので、見慣れない部屋が視界を通っていく。


「さすが教団、夜だといっそう不気味さー」


最初は楽しそうにしていたラビも、明かりがなくなり、ろうそく1本だけとなると少々不安のようだった。
ラビが隠し場所を探しながら歩き続けていると、背後からゆっくりと近づく影があった。
影はラビに近づくと、肩をポンッと叩く。


「うひゃぁああああ!」
「わっ、ラビ。どうしたんですか、そんな声出して」
「・・・アレン?」
「僕以外に誰がいるんです」
「びっくりさせんなよっ、しかも気配消して」
「勝手にビックリしたのはラビですけどね」


ラビはアレンの姿に安堵しつつも、すぐにこのままじゃ神田の物を隠せないことに気付き、アレンに何処かへ行くように言う。


「早くアレンがどっか行ってくれねーと、俺隠せねーじゃん」
「別に僕は神田に言ったりしませんよ。それじゃあ、また後で」
「おう」


ラビはアレンと別れると、また不気味になったのか、そこからすぐ近くの部屋に神田の物を隠す。
ちなみに神田から預かったものは、伸びきった髪結いだ。少々嫌がらせ感がある。
そこら辺の棒に結びつけると、すぐさま神田にゴーレムで連絡を取る。


「ユウー。こっちは隠し終わったさー」
『ファーストネームで呼ぶんじゃねぇ、クソ兎』
「ユウは相変わらず・・・。まぁ、結構こっち薄暗いから気をつけろよー」
『ふん・・・』


無線が切れると、ラビは談話室の方向へと歩き出した。
今度はリナリーに視点を合わせてみることにしよう。
リナリーは談話室から右方向に歩いていった。
リナリーが隠すのはアレンのリボンタイ。
どこへ隠そうか視線をさまよわせていたところ、ふとたくさんのドアが並ぶ中で、一つだけ開いているドアがあった。
リナリーは不思議そうにしながらドアへ近づくと、中から神田が出てきた。


「あれ? 神田?」
「あ?」
「私のもう隠し終わったの?」
「・・・ああ、隠した」
「だったら早くゴーレムで連絡取ってよね!」
「ああ」


神田はおぼつかない態度でそのままその場を後にした。
リナリーは少し怒りながら、さっきまで開いていたドアに目を向けると、顔を真っ青にした。
先程神田が出てきたはずのそのドアが、どこにも見当たらないのだ。
リナリーは恐怖で体を震わすと、リボンタイをその場に落として、談話室へと一目散に駆けていった。
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