マ王

□自覚
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「なぁ、やっぱなんかおかしいよ!」
「ユーリは、本当に僕のことを愛しているのか?」
「なっ・・・に」
「どうなんだ」


まともに答えを返せないまま、ヴォルフラムの顔が距離を縮めて目の前に迫ってくる。
あの顔で迫られると、男だと分かっていてもドキドキしてしまう。
鼓動が早くなって、呼吸がしづらくなる。


「ちょ、ヴォルフラムっ。顔近いってっ」
「ユーリ、愛してる」
「ヴォ、ルフラム」


自然と顔が熱くなるのを感じた。
あまりにもヴォルフラムの顔が綺麗すぎて直視できない。
おもわず目を瞑ってしまう。


「っ・・・!」


そんな展開の中で、良かったのか悪かったのか、寝室のドアがノックされた。
咄嗟にヴォルフラムの手で俺の口が塞がれる。


「・・・誰だ」
「ヴォルフラムか。ユーリ陛下はどうした」


コンラッドに助けを求めようにも口を塞がれ、身動きも自由にいかないとなればどうしようもない。
どうしよう、渋谷有利、貞操最大のピーンチ!


「寝ている」
「本当か?」
「疑うのか」


冷たい空気が一瞬部屋を満たした気がした。
俺の額にも冷や汗が浮かぶ。
しかし今はただ、この状況を見守ることしか出来ない。


「いや・・・分かった。今は退くよ。けど、もし陛下に何かしたら」
「しない」
「・・・信じてる」


ああ! コンラッドの足音が段々遠くなっていく!
なんて、そんな絶望的な事を考えていたら、ヴォルフラムの手が俺の口から離れた。
そして次に届いた言葉は、あっさりと俺の堪忍袋を切った。


「あいつはあまり役に立たないみたいだな」
「・・・ふっざけんな!! お前が口を押さえていたからだろ!?」


だが俺は直ぐに口をつむぐこととなった。
ヴォルフラムの雰囲気が格段に変わったからだ。


「あ・・・」
「お前はやはり、コンラッドを選ぶのか」
「っ・・・、でも今はヴォルフが」
「僕が?」


一気に体温が下がるのを感じながら、恐怖に顔を下げた。
爪先を見つめながら、頬にヴォルフラムの手が頬に触れるのが分かった。
あまりの恐怖心に、おもいっきり体を跳ねさせる。


「ユーリ、怖いのか?」
「・・・怖くない」


こんな時に不要な負けず嫌いを発動させてどうする俺ぇ!!


「震えているぞ?」
「震えてない」


ヴォルフラムの静かな笑い声が室内の空気をを張り詰める。
俺は息苦しく感じた。
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