マ王
□自覚
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「ヴォルフラム・・・?」
「行くぞ」
「えぇ!?」
物凄い目つきで睨んできたヴォルフに少々怯えながら後をついていく。
慌てて助けを求めようと後ろを振り向くと、驚きすぎて何も言葉が見つからないギュンターとコンラッドが、そこには立っていた。
そのまま凄い勢いで、俺の体は魔王専用職務室から離れていった。
書斎を出た2人は、早足で廊下を歩いていた。
辺りは静かで、聞こえるのは足音のみ。
「ヴォルフラム、痛い、痛いって」
しばらく歩いていると、先頭を歩いていたヴォルフラムが止まる。
立ち止まれなかった俺は、鼻を潰してボルフにぶつかった。
「痛いっ・・・と」
着いた場所は、俺がいつもお世話になっている魔王専用寝室。
大きい扉の前では、平和すぎて眠そうな兵士2人が立っていた。
「こ、これは魔王陛下と閣下。どうなされました?」
「僕達は2人で話がしたい。お前達は別の場所へ行け」
「しかし、コンラート閣下」
「僕の言うことが聞けないのか?」
「め、滅相もありません!」
兵士2人はヴォルフラムの冷気に当てられ、震え上がる。
一瞬俺に複雑そうな表情を向けてから、どこえへ去っていった。
「おい、お前ちょっと言いすぎ」
2人の兵士に代わってヴォルフラムに文句を言おうとすると、冷たい瞳と視線が重なり合った。
「入れ」
そんな冷たい口調のヴォルフラムに軽い怒りを覚える。
「おい、そんな言い方」
「いいから入れ!」
一際強く怒鳴られたと思えば、直後ヴォルフラムに背中を強く押された。
いきなりの行動に、俺はつんのめってしまった。
「うわ!? 何すんだよいきなりっ」
ヴォルフラムの扉を閉じる音が、静かな寝室に響き渡る。
いつもと違うヴォルフの怒りを感じて、俺の声も自然と震えた。
「ヴォルフラム・・・?」
おそるおそる話しかけると、ヴォルフが後ろ手で鍵を閉めたのが見えた。
俺は焦って顔を青くする。
「ちょ、ヴォルフラム! 鍵なんか閉める必要なんかないだろう?」
なんとか強気の姿勢を保つものの、ヴォルフから感じる冷たい雰囲気に俺の体は縮こまった。