マ王
□春と陛下
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「俺今はコンラッド達に感謝」
「何で?」
「だって、久しぶりに村田とイチャつけたし」
普段は恥ずかしがってこういう事をなかなか言わないユーリが、さらっと口説き文句を村田に言う。
村田は今度こそ驚いて、数秒間その場に
固まった。
「・・・渋谷今日は大胆だね」
「ん? 変わんないだろ」
「まさかのベタな無意識?」
小説や漫画ではよく見かける無意識。
村田は紙面で見てるぶんにはなんとも感じる事のなかった、いわゆる1つの萌え要素。
でも実際に意中の子から言われたら結構な大打撃を受ける事を、村田は身をもって知った。
「渋谷みたいな奴を恋人に持つと苦労するってよく言うけど。あながち間違いじゃないかもね」
「何だよ、いきなり」
「心配だって事」
「俺は結構一途だぞ」
ユーリはたまに核心を突いているようで、核心を突いていない事を突発的に発言する。
これには村田だけでなく、従者達もがいまだに困惑してしまう。
「分かってるよ。君が同情なんかで他の奴に付いていかない事ぐらい」
「じゃあ」
「でも心配なのは変わらない」
珍しい村田の我侭に、ユーリは穴が空きそうなぐらい相手を見つめた。
何か言ってあげたいけれど、良い言葉が思いつかない自分にユーリは少しイラつきを見せた。
「俺は村田が好きだぜ?」
「うん、知ってる」
ユーリの愛の告白に、冗談めかして返す村田。
脳みそをフル回転させてユーリの口から出てきた言葉は、ありきたりだけれど、真っ直ぐで嘘偽りの無い純粋な愛だった。
村田はどこまでも真っ直ぐな彼に、顔が緩んでしまうのを禁じえない。
「村田、ニヤニヤして気持ち悪い」
「ちょ、渋谷酷いんだけど」
「気持ち悪いものは気持ち悪い」
嫌そうな表情をする村田をおもしろく思ったのか、ユーリはからかうように同じ言葉を何回も繋げた。