マ王

□春と陛下
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ユーリは温かく柔らかい感触が自分の唇に当たるのを感じた。
何が起こったか理解するまでに時間はかかったが、分かってしまえばユーリの顔はゆでだこみたいに顔を染めた。


その感触はユーリの口の中を十分に堪能すると、最後に彼の唇を舐めとってから離れていった。


「ご馳走様」
「む、村田。い、いいい今っ」
「美味しかったよ?」
「んなわけあるかぁ!!」


経験不足のユーリにとってはこれ以上無い深いキスに、ただ赤い顔のまま文句を言いって、軽く相手の胸板を叩く事ぐらいしか抵抗する術は無かった。


でもそんな慌てながら力の入らない手で叩かれても、村田にとってはただ愛おしさが込み上げる行為にしか見えなかった。
そうやって見える村田もかなりいってるかもしれない。


「良いじゃん。僕達恋人同士なんだからさ」
「それを今言うか?」
「まぁ、渋谷が僕以外の奴にやられたら、そいつを打ち首獄門市中引きずり回しの刑だけど」
「冗談でもやめてくれ」


いつも通りのやり取り。
恋人同士の会話というには少し色気が足りないのかもしれない。
でも本人達は満足そうに言葉を交わし、そしてたまに口付けを交わすのだ。


「なぁ、村田」
「何、渋谷」
「もう、1回って言ったら・・・してくれんの?」


ユーリはいまだに顔は蒸気しているものの、どこか嬉しそうに悪戯っぽく笑顔を浮かべた。
村田は一瞬虚を突かれた表情をするが、直ぐにいつもの真意が読めない笑みを浮かべ、ユーリに顔を近づけた。


「んぅ・・・っ」
「渋谷凄い可愛い」
「か、可愛くねぇし!」
「ね、他の誰にもそんな顔見せちゃ駄目だよ。渋谷は僕のモノだから」
「・・・見せねぇよ」


少々独占欲が伺える発言に、ユーリはくすぐったそうに相手を抱きしめた。
それに村田も抱きしめ返す。
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