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□リボン
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坊ちゃんの指が私の髪を梳いたと思うと、ぎこちない動作で長めの髪を1つに纏めた。
そして持っていたリボンで結い上げると、少し距離を作って私を真正面から見つめる。


しばらくしてから満足そうに笑顔を浮かべ、また自分の椅子へと戻っていきました。
これは、なんと言うか・・・選択肢にすら入っていませんでした。
坊ちゃんから私にプレゼントを贈るなんてありえない、そう思っていましたが。
思い込みだったようですね。


「ありがとうございます」
「ふん。これだけの色を揃えてみたが、お前は不気味なぐらいその色がしっくりくるな」


髪に緩く結ばれたリボンの色は、私と同じ瞳の色。
リボンの方がいくらか綺麗な色をしていますが。
これは坊ちゃんなりの褒め言葉なのでしょうか。
少しけなされているようにも取れますが。


「ほかのリボンは捨てるんですか? もったいない」
「お前が欲しいならやる」
「こんな大量に、私の部屋には入りきりませんよ」
「無理やりにでも入れとけ。それとこれからは毎日付けて仕事をしろ」
「命令ですか?」
「そうだ」
「イエス・マイロード」


話しが終われば、坊ちゃんは紅茶を飲みながら仕事の書類に目を通し始める。
私は主人が食べ終えるまで、いまだに視界を覆う大量の布生地に触れてみました。
見てるだけでは気づきませんでしたが、かなり上等な糸が使用されていました。
そう思うと少々私、執事には勿体ないとも思えてきます。
一使用人にこんな高価な贈り物をするなんて、坊ちゃんぐらいなものでしょう。


「・・・嬉しくないのか」
「はい?」
「僕からのプレゼントは嬉しくないのか」


これはとても驚いた。
そんな感情的な質問を悪魔の私に問いかけてくるなんて。


「たとえ気に入らなかったとしても、お前に拒否権などは存在しないが」
「いえ。意外だっただけで、嬉しくないわけではありませんよ」


坊ちゃんの発言は、もう問いかけの根本的な所から間違っているが、あえてそれは言わずに言葉を繋げたました。
すれば、主人は椅子を動かして私に背中を向けた。
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