D灰

□ミチシルベ
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「師匠……僕はノアなんですか?……」


師匠と呼ばれた男は、そう呟いた若い男に軽く目線を向ける。


「……正確には“ノアの遺伝子を組み込まれた人間”……だがな」
「キツい言い方……するんですね」


師匠曰く“赤毛の男”は、白髪の若い男に一言言い放った。


「死にたいか?」





外がまだ薄暗い頃、修練場から激しい物音が響いていた。


「スッキリしない」


この少年の名は“アレン・ウォーカー”
どこか暗い雰囲気を漂わせていた。
アレンが暗い理由、それは――……。


「おい」
「わっ!?」


突然後から声をかけられ、おもわず肩を大きく跳ねさせてしまう。


「そこまで驚く事ねぇだろ」
「神田……すみません」


“神田ユウ”黒髪長髪の日本人だ。
アレンとはあまり良い仲とは言えない。
神田は俯き気味のアレンに静かに問いかける。


「てめぇ……昨日から様子がおかしいぞ。何かあったのか」
「何でもありませんよ……」


2人を包む重い空気を消すように、修練場の向こうから靴音が鳴り響く。
それは少しずつ近づきながら音を大きくしていく。


「誰だ……」


神田が、ドスの効いた声で低く呟く。
そして少ししてアレンの目に明るめの茶毛が映った。


「ラビ!」
「チッ……」
「温度差のデカイ挨拶どうもね」


苦笑しながら、いつもの冗談めいた口調で返事を返す。
“ラビ”次期ブックマン後継者だ。


「てめぇこんな時間に何やってやがる」
「俺は見回り。お2人さんこそこんな早くに何やってんさ?」


ラビの質問にアレンは笑顔で答える。


「僕は身体を動かしに……」
「ほへ〜。ユウは?」
「下の名前で呼ぶんじゃねぇ!!」
「す、すんませんッ」


ラビは神田のあまりの気迫におもわず謝ってしまう。
そして怒鳴られた勢いのままアレンに顔を向ける。
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