D灰

□ぬくもり
1ページ/2ページ

僕は教団を離れた。それはとても重い決断だった。
リナリー達とは敵同士。もうラビとは昔みたいにしゃべれない。
自分で決めた覚悟なのに、こんなに辛いのは何でだろう。
教団に居た時みたいに、周りには誰も居ないからだろうか。
隣を目だけで見ると、ティムが僕に寄り添っていてくれた。


「ティム・・・、ありがとう」


優しくティムの頭を撫でる。ゴーレムにそういう感覚があるのかは分からないが、くすぐったそうに微笑んでくれたような気がした。
確かに1人は寂しい。昔は平気だった1人きりが、今はとても怖くなってしまった。
弱くなってしまったと実感したのは、仲間たちと別れて暗い夜を過ごしてからだった。
神田が鼻で僕の事を笑う仕草すらも、今はとても懐かしい。
そして、何よりもいつも笑顔で僕の傍に居てくれた彼の声が聞こえない。


「・・・ラビ、元気かなぁ」


それでも、彼の事を思うだけで自然と笑顔になれた。
ラビと過ごした時間は、僕にたくさんの衝撃を与えてくれた。
最初出会った時は槌でおもいっきり飛ばされた。
クロウリーの時は、ラビの女ったらしさに呆れた。
中国に行った時も、アニタさんにストライクとか言って。
そう言えば、腕が治って日本に着いた時、凄く喜んでもらえたっけ。
思えば、ラビとあんまりゆっくりした時間を過ごした事って無いような気がする。コムイさん事件で潰れちゃったりして。
こうやってラビの事を長く考えるのは初めてかもしれない。


「長い時間一緒に居たのに、不思議な感じだ」


最後に話したのっていつだったかな。
とても前だった気がする。
ラビと話している時は凄く楽しくて、幸せで、少しの時間だけAKUMAの事を忘れられた。
ラビを思うだけで顔が熱くなって、心臓が速くなって。
手を繋げただけで緊張したり、夜一緒の部屋で寝たり。
僕ってこんなに乙女だったかと疑うほど、ラビがいとおしくて。



『あれ、アレン。口にクリームついてるぞ』
『えっ、ごめん!』
『ほれ。ん、甘い』
『な、何してんですか馬鹿ラビ!』
『え? 舐めただけだけど』
『ここ食堂ですっ』
『えー、いいじゃーん』
『うるせぇんだよ、バカップル! 食事くらい黙って食え!』
『ユウ嫉妬か? 男の嫉妬は醜いさぁ』
『表に出やがれクソ兎・・・』
『ちょ、ちょっとラビに神田! だからここは食堂だって言ってんでしょー!』



楽しかった時間はもう帰ってこない。
ラビと、おもしろおかしく笑って、ふざけられる些細な時間を僕は自ら潰してしまった。
教団に来て、ラビに出会ってから当たり前だった日々。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ