D灰

□可愛いは喧嘩の元
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春を彩る桜の蕾が開く頃、教団内では花見の話が持ち上がっていた。
もちろんアレン耳にも入っていたが、生まれてから一度も日本の風習に触れた事のないアレン。
桜の名前ぐらいは記憶にあるものの、実際に見たり、プラス花見などした事もなかった。
しかし、ジェリーから美味しいものがたくさん食べれると聞き、それだけでアレンの疑問はどうでもよくなった。


なんてそうこうしている内に、花見が行われる当日になっていた。
今日だけはエクソシストも団服を脱ぎ、楽しんでいいとの大元帥から許可が出ている。
アレンは脳内にジェリーの料理を描きながら、私服に着替えようとしていた。


上半身を纏っている服を脱ぎ、ワイシャツに手を伸ばそうとしたその瞬間。
誰かによってアレンの自室のドアが勢いよく開かれた。
おもいっきりアレンは肩を跳ねさせ、ゆっくりとドアの方向へ顔を向けた。


「リナ、リー?」
「アレン君! 今日は何着ようとしてたの?」
「え・・・? 普通にシャツとベストで」
「駄目、駄目よアレン君!」
「え、駄目?」


入ってから突然熱く何かを語りだすリナリーを、アレンは呆然と見つめた。
おそらくアレンが花見へ着ていこうとしている服に文句を言っているようだが、アレンには何が何だかさっぱりだ。


「もう出来ないかもしれない花見なのよ!? せっかく良い容姿持ってんだから、オシャレしなきゃ!」
「お、オシャレ?」


リナリーは軽く悲しい事を言いながら、アレンを無理やり立たせて腕を引っ張る。
上半身裸なアレンは少々薄ら寒く感じながら、リナリーに引っ張られていった。
そうして着いた場所はリナリー衣装部屋?らしき場所だった。
中を覗いてみれば、たくさんの可愛らしい洋服達がずらりと並んでいた。
想像以上の量の多さにアレンはビックリする。


「凄い量ですね・・・」
「全部兄さんが買ってくれたのよ」
「コムイさんが・・・」


ねだられたコムイを想像し、アレンは少し同情してしまった。
リナリーは現実逃避しているアレンには目もくれず、大量の衣装の中から一式の着物を取り出した。
そしてアレンの目の前に差し出す。


「・・・着物、ですよね? たしか」
「そうよ。今日私はこの色違いを着ていくの」
「リナリーは可愛いからとても似合いそうですね!」
「ありがと。それで、アレン君にはこれを着てほしいの。お揃いよ!」


リナリーの驚愕的なセリフに、アレンは頭の中が真っ白になった。
目の前の光景と彼女の言葉が信じられなくて
、おもわず着物とリナリーを交互に2度見をしてしまったアレンだった。


「はい? これって女もの、ですよね」
「そうよ」
「僕は男ですし、サイズ的に無理なんじゃないかな〜」


なんとか逃れようと正論で訴えるアレンに、リナリーは天使のような笑みを浮かべて悪魔のような言葉を発した。
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