D灰

□愛しい人
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※少しネタバレ含みます。


一際目立つ存在がアレンの視界に現れた。
アレンが自らの立場を犠牲にしてでも守りたかった存在、神田ユウだった。
アレンは泣きそうになりながら、クラウンとして笑顔を貼り付ける。
バレないように、必死に大道芸を繰り返す。
しかしそんなクラウンの後姿を見つめる神田。
この後神田はジョニーに連れていかれるが、結局アレンの正体はバレてしまった。
その後アレンはノア化なりかけのせいで路地で倒れてしまい、ジョニーたちと宿を取った。
アレンは眠り続ける夢の中で、14番目とは違う夢を見ていた。
今となっては少し懐かしくも感じる、教団に居た時の夢を。


まだアレンが顔に幼さを滲ませる頃、アレンは談話室で神田と鉢合わせてしまった。
神田はアレンの姿を捉え、相手に聞こえるように舌打ちした。
アレンはあからさまなその態度に気分を悪くしながらも、談話室のソファーに座った。
ちょうど神田が今座っている位置のソファーから、直ぐ横に置かれているソファーにアレンは座った。
おそらくこれは、アレンなりの行動で示したお返しなのだろう。
神田はますます眉間に皺を増やす。アレンはそんな神田をおかしそうに笑った。
しかし嘲笑うような笑みではなく、単に神田の行動に対して笑みがこぼれてしまっただけのようだ。
神田は席を立つと、アレンの後ろに立ち、結構な力でアレンの頭を拳で叩いた。


「あてっ! 何すんですかバ神田!」
「テメーがわりぃんだろ」
「何ですか、貴方が子供っぽい反応を示すからですよ!」
「んな行動してねーよ!」
「おや、自覚してなかったんですか?」
「上等だ・・・切ってやるから立ちやがれ」
「望むところですよ」


こんな2人だが、教団内では有名な喧嘩ップル。
愛はあるのだろうが、いつも喧嘩が絶えないアレンと神田。
しかし2人が付き合ってからは、周りの視線も慣れた様に過ごしている。
これがいつもの2人なのだと、リナリーは微笑ましく見ていた。
そんなみんなに囲まれながら、アレンと神田は過ごしている。


「まったく、何で貴方はそんなに短気なんですか」
「テメーがイラつくことばっかしてやがるからだろ」
「してませんよ。僕は紳士なので礼儀正しいです」
「ハッ、どの口が言う」
「少なくとも貴方よりは」


それから2人はお互いがボロボロになるまで、喧嘩を続けた。
やりすぎのラインを超えると、リーバーの怒りの怒声が談話室に響き渡る。
反省として、談話室の掃除を2人は命じられた。


「・・・貴方のせいですよ」
「テメーだろ」
「大体、仮にも恋人が喧嘩ばかり。しかも傷だらけの言い合いをするって、どうなってんですか」
「モヤシは恋人らしいことがしたいのかよ」


アレンの言葉を悪い顔でニヤニヤしながらアレンに返す神田。
アレンはそんな神田の表情にムッとしながら、地面を掃くほうきを動かし続ける。
地面を見つめ続けながら、アレンは小声で神田に返事をする。


「・・・そういうこと、期待したっていいじゃないですか。恋人なんだから」


予想外の素直なアレンの言葉に、神田も笑うのを止める。
そして同じようにほうきを動かし始めた。
2人だけが残る談話室に、ほうきが地面を擦る音が響く。
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