銀魂

□初恋
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「銀時の初恋って誰だ?」
「ああ?」


土方はふと思った事を銀時に聞いた。
思ってもみなかった突然の質問に、銀時は怪訝そうに土方を見た。
土方はそんな視線をさらりと流し、もう一度同じ質問を聞く。


「てめえの初恋は誰だ」
「何だよ、いきなり」
「なんとなく気になってな」
「じゃあてめえから言えよ」
「俺はもういねーよ」


土方は表情を一切変えないで言葉を紡(ツム)いでいく。
銀時は気まずそうに頭を掻きながら、居住まいを正した。


「俺は……塾の先生だよ」
「同性か?」
「……おう」


銀時はその時の事を思い出したのか、少し表情を陰らせた。
土方は過去の事と言えど、おもしろくはなかった。
そんな自分が馬鹿らしくなってきたのか、頭を乱暴に掻いて座りなおす。


「どうした?」
「おもしろくねぇ」
「今さら何言ってんだよ」
「分かっててもおもしろくねぇ」


子供のような言い分を言う土方を、苦笑しながら銀時は見た。
どこかむず痒くて、心がゆっくりと温まるこの感じ。
銀時は幸せを感じていた。
笑顔を浮かべたまま、銀時は背中で土方に寄りかかった。
お互いに背中を向けあってるという状況だ。
先生とはまた違う温かさに、銀時は優しい心持ちでいた。
しかし反対側にいる土方はそれに気づけず、いまだに煮え切らない気持ちでいた。


「俺は本当に先生が好きだったよ」
「そうかよ」
「お前だって彼女のこと、好きだっただろ?」
「……ああ」


土方と銀時は不思議だと、心の中で思った。
お互い、歯車が狂わずに刻まれていれば、こんな関係にもならなかった。
それが今こうやって愛を囁く関係にいるのが。
銀時は顔の見えない、隣にいる恋人を思った。
そして目をつぶって、言葉を土方に語りかける。
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