銀魂

□口で言わなきゃ伝わらない
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俺が思いを寄せる万事屋の旦那は、もっとも合わないんではないだろーかという同属のS。
でも今だって片手に彼の大好物、甘味を手土産に万事屋の玄関前に立っている。


「重症でさぁ」


自覚はしているけど衝動は止められない。
今までは昼寝のためにサボっていたが、それがいつのまにか旦那に会うためサボるようになっていた。


「何歳離れてんでぃ」


自嘲気味の笑いを零しながら、俺は万事屋のインターホンを押した。
押してから気づく小さな不安。
出てくる奴が旦那以外だった場合を考えていなかった。
笑った奴は表へでろぃ。
眼鏡はまだいいとして、問題はあのガキだ。
俺が土産を持ってきたなんて知ったら、奪い取られる事が目に見えている。
その前に不信がられるかもしれない。


「いや・・・でも」
「なぁに玄関前でブツブツ呟いてんの、怖いんだけど」
「旦那ぁ!」
「ちょ、うるさい。叫ばないでくれる?」


考え事に没頭しすぎていたのか、旦那が出てきてくれた事に気づかなかった。
嬉しい事に、考え事は全て水の泡。
見たところ中から人の気配も感じられない。


「君さ、昨日も来たよね。何、銀さんの事見張ってくれちゃったりしてくれてんの?」
「そんなわけないでさぁ」
「あっそ。で、今日は何の用事」
「いやぁ、ちょっと旦那とでも話そうかと思いやして。あ、これ土産です」


右手に持っていた甘味袋を掲げれば、とたんに態度を180度変えて対応してくる旦那。
こういうところは素直で可愛いと思う。


「なんだよ沖田くぅん! それならそうと言ってくれればいいのにぃ。さ、上がって上がって」
「お邪魔しまーす」


常々旦那と接していて思うが、このご時世を生きているとは思えないくらい、ホントに無防備だと感じる。
いくら俺が甘味を買ってきたからって、簡単に家へ上げてしまうのは無用心ではないだろうか。
俺の下心も気づかずに、目の前で笑顔を振りまいて。
それとも、俺の事を男として意識してないからこその行動なのか。
やべ、無償に泣きたくなってきたでさぁ。


「お茶でいいよな」
「はい」


最近通いつめてたからかもしれないが、俺は当たり前のようにソファーへと座ってしまった。
そして俺がいつも来る時間帯には、お子様達の騒がしい笑い声も聞こえない。
俺は目を瞑ってお茶が注がれる音に意識を向けた。
思えば、こんな静かな時間を過ごすのは久しいかもしれないでさぁ。
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