朽ち果てるまで Book

□エリザベス来訪
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「シーエル!!つぎはおままごとしてあそびましょう!もちろんわたしがお姉様役でシエルは弟よ!あ、お姉様はお母様の役をやってくださいますか?」

私はいいわよ、と快く了承したが、シエルは何でぼくが年下なんだ!とか怒っている。二人とも大人振りたい年頃なのね、と内心一人でくすりと笑う。互いに一歩も引かずに言い争いをしていたが、しばらくするとシエルは私に助けを求めてきた。

「ねぇさまからも言ってください!!ぼく、弟なんていやです!お兄様の役...ううん、お父様がいい!!」

「え゛、お父様?!」

「はい!お父様役がいいです!」

驚いて思わず変な声を発してしまった。だってお兄様ならともかくお父様役なんて...まだ弱冠6歳のシエルの老けた姿なんて見たくない、というか想像すらしたくない。だってつい先日一緒に寝たばかりなのに...シエルにはいつまでも!...は無理でも、当面はかわいいままでいてほしい。そういう自分の欲望も含めてたしなめなければ、と思った。

「えーっとねシエル、シエルは弟役がいいと思うよ...というかお願い、弟役やって!」

「?なんでですか?ねぇさま??」

シエルはきょとんとした表情で私を見上げている。それだよ!そのかわいい姿のままでいてほしいからだよ!...と思ったが正直に言うべきでない。そこで私はなるべく気に障らない、もっともな言葉を選んで答えるようにした。

「だってせっかくエリザベスさん「エリザベスですわ!お姉様」...エリザベスが来て下さっているのだから、ここは彼女の意見を優先すべきでしょう」

「えー、でも...」

「シエル・ファントムハイウ゛。ファントムハイウ゛家の次期当主たる者、それくらいできなくてどうします?」

少し強い調子で言うと、シエルはまだ不満そうだったが、はぁーい、と言ってくれた。よかった。こんな姉でごめんね、と内心小さく謝った。

「ほらぁ!やっぱりシエルはお父様役なんかより弟役がいいのよ!」

「うるさいっ!ぼくはしかたないからやってやるだけだ!」

「でもやっぱり弟がふさわしいってことだわ!!ほらシエル、お姉様を大広間までエスコートしなさい!」

「なんでぼくがっ」

「あら、シエルったらファントムハイウ゛家の次期当主なのに、そんなこともできないの?」

「〜〜っ!!」

「シーエル!はやくー!」

「うぅっ」

言い返すこともできず、悔しそうに嫌々言われたとおりにするシエル、そして得意げに彼の差し出された手を受け取るエリザベス。

微笑ましかった。

まるで人形のように、さながらセットのヒグスドールのようにお似合いだった。一人は仏頂面、もう一人は満面の笑み。でも妙に調和がとれていて違和感どころか、完璧だった。幼い少女と少年は、まるで昔描かれた絵画から抜け出したように。

美しかった。

...その光景が妙に眩しくて、私は思わず目を背ける。



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