朽ち果てるまで Book
□それぞれのプロポーズ
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『僕と結婚していただけませんか』
あれからどうやって帰ったのかわからない。いや、自分の馬車に乗って帰ったのは間違いないだろうが...思考停止した頭がカタカタと馬車に揺られていたのだけぼんやり覚えている。
だって...誰が思うだろうか。プロポーズされるなんて。社交界デビューから六ヶ月ちょっと。ルーベンス公爵と出会ってからまだ半年しか経たないのに。
しかも私はまだ十三歳。結婚なんて、まだまだ先の話だと思ってた。実際普通はまだ五年、十年、早くともニ、三年の未来の話なのに早過ぎる。私はまだ子供、そう思っていたのに。
どうしよう。どうしたらいいんだろう...自分がもう、子供という安全不可侵の領域から踏み出していることを思い知らされた。したがって私はもう大人であるはずなのに、こういうとき、どうすればいいのかわからない自分はまだまだ子供なのだと感じる。矛盾。炎が先か、不死鳥が先か...永遠に答の出るはずのない円の如し問のようにプロポーズの言葉だけががぐるぐると脳内を反響する。