敵同心。

□2. 既存の枠組みに当てはめる
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既存の枠組みに当てはめる


私、錐生理知は名門・全寮制黒主学園高等部普通科二年、所謂デイ・クラスに所属する生徒である。実は自分にとって「学校」という場はさして大切な空間でもないが、従兄弟の零と同様、とりあえず言われるがままに通っているのが現状だ。学歴が無いのも何かと不便であるし、学園生活は、確かに面倒であることは否めないが耐えられないほどの閉塞感を感じるものでも無いから、というのが主な理由である。


時折「学校こそ我が命!」とかなんとか騒いでるクラスメイトもいるが私にはわからない。というか、理解する気もない。自分の感覚が同僚たちと大幅にずれているという自覚はあるし、そんなのは結局、死に対峙したことの無い人間の台詞だと思うのだ。


そもそも命なんて儚く一瞬で消えてしまうもので、熱を帯びた少年少女の感性とは大分かけ離れたものだろう。一々同僚のことを斜め上から冷めた目で見ている自分には、都合の良い程度に絡む人脈はいるけれど、別段仲良くしている友人は居ないし、これといって欲しいと願ったことも無い。


恋愛なんて以ての外だ。人間関係に時間を費やすつもりも悩むつもりも無い私にとって、学園生活には必要最低限の交流さえあれば問題ないのだ。


とりあえず普通科の、一介の女生徒である私のスケジュールは以下の通りである。


朝起床し、朝食を食べ、登校して授業を受けて、昼食をはさんでから退屈極まりない午後の授業を聞く。ちなみに理解は早い方だが、必要以上に勉強をするつもりは無いので成績は中の上程度。下校の時刻まで図書室で眠ったり読書をしたり、まあ、圧倒的に後者が多いがとりあえず時間を潰す。


入れ替えの時刻きっかり十五分前になると、私は読んでいた本なり雑誌なりを閉じて月の寮の門の全景が見える丘の上から夜間部の入れ替えを覘きに行く。雨の日は傘をさしながらでも行く。嵐の日…は多分休講だから日の寮に篭っているけれど、夜間部の授業があるというのなら私は行くだろう。白い制服を着た彼らが校舎に入るのを確認したら一旦寮に戻って、朝の入れ替えまで大人しく眠る。それで起きて、今度は寮に戻っていく彼らを見届けてから一眠りし、私も学校に行く。


これは毎日必ずやっていることだ 。別に私が夜間部のファンであるとか、彼らに興味があるからとか、美形の集団に好奇心旺盛だからとか、決してそういう甘く懸想な感情ではない。単純に、私がハンターだからである。
 


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