番外編

□ある男のお話
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「おお、ガープ!久しぶりだなぁ」

「なんじゃい、今まで一体どこ行っとったんじゃ」

「んーまァ、いろんな所にねぇ」

「わしは構わんが、センゴクがお怒りだぞ」

「ちょっとは構えよ」

淡い碧色の髪を短く揃え前髪を上げた男はやだなぁ怒られるかなぁ、なんて言いながら廊下を進んでいく

ガープはだるそうに“正義”を背負うその男の背中を見て溜め息を吐いた

普段周りを振り回すガープが、その男にはどうも振り回される

それはまぁ、ガープだけではないのだが…




「やあやあセンゴク、仕事頑張ってるかい?」

「……今までどこ行っていた、貴様」

「んーまァ、いろんな所にねぇ」

怒気を含んだセンゴクに先ほどと全く同じ返事をする男




「もう少し中将として行動を謹んでほしいものだが…聞いているのか、レフリア」

「ん?あー行動慎むとかムリムリ」

「…お前ももういい歳だろう」

「なんだとセンゴク、失敬だぞ!おれはまだまだ若い!」

「中身だけな」

「にしてもよォ、センゴク…海兵の教育何とかなんないのかー?」

「聞いとらんな」

レフリアと呼ばれたこの男は海軍本部の中将であり、実力もある

後に決して公表してはならない大事件を起こす人物である




「ここ来る途中で海賊と戦ってる海兵がいたんだけどさ、弱いのなんのって…沈めようかと思ったよ」

「止めろ」

「あっはっは」

ソファに豪快に座り愉快そうに笑ったレフリア

どこから出したのかお茶を飲んでいる



「そうだ、レフリア」

「ん?」

「確か未提出の書類があったな、いつ出すんだ」

「あ…無くしちゃった」

てへ、と舌を出したレフリアにセンゴクが持っていた湯呑みが命中した







「湯呑みは投げちゃ駄目なんですよぉ…」

額を押さえながら自室へと向かっていくレフリア


廊下ですれ違う海兵に笑顔で挨拶をすれば顔を赤らめられる

レフリアはいわゆる美形でかなり人気が高いのだ

中将でありながら気さくな性格で、明るく周りを和ませる…と思っているのは遠巻きに見ている海兵だけで

少しでも近くにいる海兵は“和ませる”などとは絶対に思ってはいないだろう





「中将!レフリア中将!!」

「んあー?なんだよーおれ今湯呑みぶつけられて傷心中なんだよー」

「何言ってんですか、いつもの事でしょう…それより書類の整理してください!!」

「あんちゃんも言うようになったよねー」

「…はァ、全くこの人は…」

帽子をかぶった黒髪の青年は通称“あんちゃん”(レフリア命名)、本名アーディは

レフリアの部下であり一番迷惑をかけられている人物である



「分かった分かった…」

書類に埋もれた机に向かい椅子に座ったレフリア

書類をぺらぺら取り出しながら欠伸をした




「なんだ…クザンからじゃん、コレ」

「手紙、ですか?」

「ただのメモだけどねぇ」

「なんですかね…」

「まァ後で行くよ」

「いいんですか?今じゃなくて」

「今行ったらあんちゃん怒るじゃん」

「ええ、整理終ってからにしてください」

「へいへーい」

頬杖をつきながらもテキパキと書類を片付けていく

一時間もすれば机の上はキレイになった



「やれば出来るのに…」

「んん?あんちゃん何か言ったか?」

「いえ何も」

「じゃあクザンとこ行くわー」

「はい」

白いコートを翻し自室を後にしたレフリア

そんなダルそうに歩いていったレフリアを目で追い、キレイになった机を見て溜め息を吐いた




「なぜあの人は…海軍に入ったんだろう」

いつも気ままで、いつの間にはどっかへ消えてしまうあの人についていくのは本当に大変で

でも心から尊敬できる


けれどあの人の本心は誰にも分からない…誰も知らないんだ

いつかきっとあの人は、自分の手の届かないところへ行ってしまうんだ







「そうしたら僕は、どうするのかな…」

あの人を追う?

無理だね

ここに残る?

あの人以外の下につけるのか

じゃあどうする?







「その時にならないと分からないさ…」


再び溜め息を吐いたアーディは書類を抱え新しい湯呑みを使用しているであろうセンゴクのもとへ向かった








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