Memory does not change.
□第八夜
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「さっきは悪いな」
「…どーも」
美形野郎は、ははっ、と笑いながら詫びを入れてきた。
そしてなぜか一緒に歩き始める。
その足どりは元気とは言えなかったが、まぁ特に問題はなさそうだ。
「俺はティキ。ティキ・ミックだ。あんたは?」
「レイだ」
そうか、レイか、とティキと名乗る男は俺の名前を反復した。
聞きたいことは色々あるが、首を突っ込んでいいものか。
と考えているとティキの方からペラペラ話し始めた。
「いやー探し物があってこの森に入ったはいいが、迷っちまってな…しかも俺にはこの森は体に毒で辛いのなんのって」
「へぇ…」
「おまけに体温まで奪われて、疲れて座り込んでるときにちょうどいい抱き枕が…」
「…」
「はは、悪い悪い」
俺が睨むと言葉を止めてティキはまた笑った。
変な男だ。
「で、レイは何しにこの森に?」
「あんたと同じ、探し物だ」
「ほー…」
ぞくっ。
「そりゃご苦労様だな、この森は広いからな。見つかるといいな」
「…ああ、お互いにな」
一瞬。一瞬だったが、嫌な空気を感じた。
それは確かに隣にいるティキから感じたが、今はもう何も感じない。
嫌な予感、は当たるもんだ。
俺は一層警戒心を強めることした。
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