Memory does not change.
□第一夜
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ここはごく普通のとても平和な町。
大きさは、小さくもなくそこまで大きくもない。
しかし、その町にとても立派な図書館がある。
人が多く集まる商店街や、キレイで清潔な病院もある。
そして、その町には、おいしいと有名な一人の老人が経営するパン屋があった。
有名ではあるが小さいパン屋で、パンを焼いているのはその老人一人。
しかし、そこでは一人の青年が老人と共にパン屋でせっせと働いていた。
青年の名はレイ。
薄茶色の髪に、同じ色の瞳。小顔に目が大きく、綺麗な顔立ちをしている。
両耳には、大きな黒いピアスをつけていた。
「おやおや、レイくん。お手伝いかい?」
「ああ、父さん一人じゃ大変だし。まぁでも、俺はパン焼けないから並べるだけだけど」
「そうかい、偉いねぇ」
パン屋の常連のおばあさんが、棚にパンを並べる青年に声をかけた。
青年はおばあさんの褒め言葉に恥ずかしそうに微笑んだ。
そして直ぐに奥へと戻り、焼きたてのパンをトレーに乗せ並べはじめた。
そんなレイの姿を、おばあさんや他のお客さんが微笑ましそうに見ている
「ホントに親孝行な子だねぇ…」
「ああ全くだ。息子に見習ってほしいくらいだな」
「最初はどうなるかと思ったけどねぇ」
「あれから二十年くらいか…」
レイはパン屋の老人と血縁関係にはない。レイは拾われたのだ。
今ではもう六十を越えているパン屋の老人だが、当時は四十歳前後。
結婚はしていたが、妻は結婚して早々に他界してしまった。それから一人で生きてきた老人。
そんな独り身の男に子どもの子育てなど不可能だと言われ、施設行きだと説得されていたが
老人は当時それを拒み、結局一人でレイを育てたのだ。
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