white whale!
□第十七章
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「……」
(ユウトがやべえええ)
ここ食堂、ユウトの周りがごっそり空いていた。
いつもならサッチやマルコ、エースなどと一緒にご飯を食べている。
しかし、数日前からエースとは距離が空いていた。
そして今度はサッチやマルコまで距離が開いてしまった。
否、近づけないのだ。
もうユウトは不機嫌なんてレベルではない。
今だったらきっと目線だけで敵を追い返せるのではないだろう。
「敵襲だ!」
と甲板から大きな声が響いてきた。
その声に反応して、久しぶりの敵だと船員たちが騒いだ。
ユウトもその船員たちに混じり甲板へと出て行く。
さっきまで恐ろしくて近づけなかった船員たちも、いつの間にやら忘れているのか、普通にユウトの横を歩いていく。
そして、甲板に出ると中々強そうな海賊たちが武器を手に乗り込んできている。
敵は船を二隻所持しているようで、モビーはその二隻の船に挟まれていた。
敵船からはまだ敵がこちらに移ってきている。
「久しぶりに楽しめそうだな」
サッチがにんまり笑って言った。
そのノリで隣りにいるユウトの肩に腕をかけようとしたとき、そのオーラにたじろいだ。
やはりユウトも白ひげ海賊団の一人のようだ。
「行けェ!今日こそその首頂くぞ、白ひげ…ぐはっ!!」
「船長ーー!?」
「ユウト!?」
意気込んで叫んだ敵の船長らしい人物は一瞬で甲板の端に吹き飛んだ。
そして先程までその人物がいた場所には、ドス黒いオーラを背負ったユウトが立っている。
ボキリと拳の骨を鳴らす姿が妙に恐ろしい。
「おれ今すっげぇイライラしてんだわ。でも仲間に八つ当たりするわけにもいかねぇしなァ。おれの言いたい事、分かるか?」
「ひっ…」
ぎゃああ、という悲惨な叫び声があがった。
(アイツってあんな怖かったんだな…)
船員一同がそう思ったが、口にすることはなかった。
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