white whale!

□第九章
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「おらっ!」

「おっと」

「まだまだァ!!」


甲板でユウトとエースが戦っている

ユウトは今度は武器を扱った戦闘をしていた

ユウトは元一般人とは思えないほど肉弾戦に長けていた

しかし、それ以上に武器、道具の扱いが上手い


初めて持ったもの、使ったものばかりだというのに

くるくる回したり、方向転換したりと上手に扱っているし、順応が早い




「うわコレ超楽しい!!」

「楽しんでる暇ねェぞ!」

「おわっと、あぶねっ!」

槍を床に刺し、それを支えに宙に上がりエースの蹴りを回避したユウト

しかし、その蹴りで槍は燃えてしまった



「あちちちっ!」

「あーあ、武器なくなっちまったな…どうする?」

「くそぉ……」

「素手でくるか?火傷するぜ」

「くぅ………あ!これ貸してくれ!」

槍を燃やされたユウトは、近くに居た一人の船員から鉄球を奪い取りそれを回し始めた

ここ数日で筋トレをしたユウトは確実に筋力をつけ、重い鉄球を回すのも余裕の様子だ



「へへっ、これなら燃えねェな」

「懲りないやつだな」

「おれは諦めの悪いバカなんだよ!!」


鉄球を振り上げ向かっていくユウト

こんなようなやりとりが、約2時間続いている




「良い動きするようになったな」

「ああ、ユウトは飲み込みが早いよい」


そんな2人を甲板の端で見ている二つの影

1番隊隊長のマルコと3番隊隊長のサッチだ

新人でありながら、ユウトは自分の隊長はもちろんこの2人、いや他の隊長たちとかなり仲が良い

それを良く思っていない者もいるが、それは一部でほとんどの者がユウトを慕っていた



「なんか、最近エースとばっか一緒に居るなァ」

「自分の隊長だから頼みごともしやすいんだろい」

「…寂しくねーのか?」

「なにがだよい」

「最初はマルコが世話してやったのになぁ…」

「別に…」

おっさん2人は若い2人が頑張っている姿を見ながら、妙な雰囲気になっていた



「でもアレだな、あんま望みはねーな」

「だからお前は何言ってんだよい」

「んー?まァ…お前がそういうならいいけどな」

「ユウトは弟みたいなもんだろい」

「…まーずいぶん歳の離れたこと」




「うわっちい!!」

「わ、悪い!やりすぎた!!」

「あちゃちゃちゃッ!!」

ユウトは腕を押さえ甲板を走り回っている

それをエースが焦りながら追っかけている

なんともおかしな光景だ…




「…でも、エースは自覚ないみたいだからなァ…こりゃまだまだ時間がかかる」

「お前はそーゆうことばっかだねい」

「楽しいんだよ、若い奴らをみてるのは」

「…歳とったな」

「お互いにな」

「うわっ!2人ともどいてくれーーッ!!」


マルコとサッチの静かな空気を壊したのは
ユウトの叫びだった

2人は軽く避けると、ユウトはそのまま船の中へ

きっと医務室か、どこかに腕を冷やしにでも向かったのだろう



「はぁ…はぁ…アイツ足はえーな」

「なんだ、追いつけなかったのか」

「生身だとな、それに結構強くなってる」

「そりゃ良い事だねい」

若干息をきらしながら走ってきたエース

なぜユウトと一緒に走っていたのかはナゾだ





「ちょっと!エース隊長!!」

「ま、待て待て待て!」

「えっ?」

船のなかからエースを呼んだのは、恐い顔をしたナースだ

その後ろには慌てた様子でユウトがついて来ている



「あれほど言ってるでしょ!ちゃんと火加減してくださいって!!」

「わ、悪い…」

「火加減て…」

「ユウトの顔に傷痕でも残ったらどうするんですか!?」

「いやおれ男だし!そこ気にしなくてもいいんじゃねーの!?」

「ダメよ!」

「うあ、は…はい」

結局エースとユウトまでナースに説教されてしまった

周りの船員たちはその様子を微笑ましそうに見ていた


ユウトが来てから、船がより一層明るくなったようだ

若いとは、すごい力をもっている

改めてよく分かった船員たちだった










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