I do not believe me.

□第一話
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「私は…強い…あなた達より強い…すごく強い!」

剣を高く上げ、ミカサは言った。



「…ので私は…あそこの巨人どもを蹴散らせることができる…例えば…一人でも」



ミカサが止まった。
言葉を考えているようだ。

それから、切っ先を皆に向けてまた話し出した。



「あなた達は…腕が立たないばかりか…臆病で腰抜けだ…とても…残念だ。
ここで…指をくわえたりしてればいい…くわえて見てろ」

(なんて言語能力の低さ…)

リトは呆れるよりも、むしろその能力の低さに感心していた。




「ちょっとミカサ?いきなり何言い出すの!?」

「あの巨人を一人で相手する気か?そんなことできるわけ…」

リトの存在に気付いていない訓練兵たちが青い顔でミカサに反抗する。

しかし、ミカサはそんな言葉に耳をかさなかった。



「できなければ……死ぬだけ。でも…勝てば生きる…戦わなければ、勝てない…」

そのミカサの言葉はかつてのエレンの言葉であった。

ミカサを生かした言葉が、今度は多くの仲間を生かそうとしていた。


そしてミカサは一人で本部へと走って行った。
唖然とする訓練兵たち。



「残念なのはお前の言語能力だ。あれで発破かけたつもりでいやがる…てめぇのせいだぞ…エレン…」

(期待の新人だな)

小さく呟いたジャンの横で、リトは顎に手を当てミカサの将来に期待していた。

あくまで顔には出さず、相変わらず無表情なままなのだが…。



「なぁ、あんた言いましたよね…実力者がいればできるって…。その言葉、嘘にしないで下さいよ」

「…ああ」

ジャンに言われしっかりと頷いたリト。
その反応に満足したのか、ジャンは今度は他の訓練兵たちに向き直った。



「オイ!!オレ達は仲間一人で戦わせろと学んだか!?お前ら!!本当に腰抜けになっちまうぞ!!」

ジャンの言葉に触発され、訓練兵たちが動き出した。
乗り気でなかった者たちも、やけくそになって叫んでいる。

リトはそんな訓練兵たちの後ろについて本部へ向かった。








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