shortDream3

□とびきりの笑顔
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工藤君に連れられて来たのは公園で。
日が沈み始めているからか、公園には人っ子一人いなかった。

重い空気の中、未だに私の腕を掴んだままの工藤君が口を開いた。


「なんで俺達を避けんだよ。」


怒気を含んだその声に、ビクッと肩を揺らす。
私は俯き、ぎゅっ、と自分の制服のスカートを掴んだ。

そして次に聞こえてきた声は、不安気で、悲しげな声だった。


「‥俺達の事、嫌いになったのか…?」


その言葉を聞いた途端、思わず私はベンチから立ち上がって「違う!」と叫んでいた。

一瞬目を丸くして驚いていた工藤君が、すぐに目を細めて、「ならどうして、」と問いかけてきた。


「‥だって、私、邪魔、でしょ?」


涙が溢れ出そうになるのをぐっと堪えて、何とか絞り出した言葉。
工藤君がまた、目を見開いた。
それを横目に見ながら、私は言葉を続けた。


「蘭と、工藤君の邪魔をしたくないし、私。だから、距離を置いて‥、」


すると突然、工藤君が「ふざけんじゃねえ!」と叫んだ。
そんな事を言われたのははじめてで、驚きのあまり堪えていた涙が一滴、ぽたり、と落ちた。


「俺と蘭の邪魔ってなんだよ?!俺達はオメーの事、一度だって邪魔なんて思った事ねぇよ!寧ろいてくれねーと困んだよ!!!」


勢いよくベンチから立ち上がった工藤君は、凄い剣幕でじっと私を見つめてそう叫んだ。


「‥なんで?工藤君、誤解されちゃうよ、?」

「誤解って何がだよ?」


疑問を疑問で返され、一瞬口を噤んだ。
すぐに口を開き、答えた。


「だって、蘭と工藤君は両想いでしょう?そんなところに、私が入ったら、」


すると工藤君が私の言葉を遮って、「オメーはバカか?!」と言われた。


「俺と蘭はそんなんじゃねーよ!周りがなんか言ってっけど、違ぇよ。‥例えそうだとしても、オメーがいないと、俺は‥俺と蘭は、困んだよ、」


眉を下げ、俯いてそう言った工藤君に、罪悪感が湧いてきた。


「‥私、一緒にいて、良いの?」

「当たり前だろ。寧ろ離れさせねーよ。これからは。」


まだ掴まれたままだった腕を引っ張られ、工藤君の胸の中にぽす、と倒れ込んだ。
驚いて目を見開いていると、工藤君がふ、と微笑んだ。
その笑みに、頬が熱くなるのが分かった。


「くど‥」

「新一。」

「‥‥へ?」


ぽかん、と工藤君を見上げると、「昔みてーに、名前で呼べよ、これからは。」と頭をくしゃり、と撫でられた。
何もかもが久し振りで、止まっていた涙がぽたぽたと、零れ落ちた。
そんな私を、優しく微笑んだ工藤君‥新一は、ぎゅ、と抱きしめてくれた。


なんて、優しいんだろう。
私はその暖かい優しさに、涙を流しながらそっと目を閉じた。

これからは、この優しさに触れていって良いんだ、と思うと、更に涙が流れた。


「新一、ありがと、」


大好きなあなたに、とびっきりの笑顔を向けたら、あなたもとびっきりの笑顔で応えてくれた。




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