shortDream4

□だから、安心して
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「いらっしゃい。」


そのしろくまさんの暖かい声が、私の胸をじん、とさせた。
極力いつも通りを装い、私はしろくまさんに挨拶をした。


「いつもの、お願いします。」


そう言うと微笑んで了承して、珈琲を淹れ始めたしろくまさん。
その後ろ姿をぼんやりと眺めつつ、私はふぅ、と1つ溜め息を吐いた。

しろくまさんを見ていると、不思議と暖かな、家族というものを思い出す。
実は先日、私の唯一の家族である祖母が他界したのだ。
記憶にない程昔は私にも両親がいたのだが、もうこの世を去っている。
そして祖父も同じく。

祖母だけが、いつも私の傍にいてくれた。
優しくて、暖かくて、私がとても安心出来る居場所でいてくれた。

その祖母が、亡くなってしまったのだ。

だというのに、不思議と私は涙を流さなかった。
多分、祖母はもうこの世にいない、と分かっているつもりでいても、心のどこかではそんなわけがない、と否定しているのだろう。

また、はぁ、と溜め息が洩れてしまった。

目の前に差し出された珈琲を見て、私はしろくまさんにお礼の言葉を述べてから、一口それを口に含んだ。


「…楓さん。」


突然、優しく名前を呼ばれ、私は少し驚きつつも顔を上げた。
するとしろくまさんがこちらへ手を伸ばしてきて、ぽん、と私の頭に置いた。


「‥辛かったでしょう?」


そう言って、私の頭を優しく、優しく撫でてくれるしろくまさんとおばあちゃんが重なって見えて、私の頬を何かが伝った。

そういえば昔よく、おばあちゃんもこうやって私の頭を撫でてくれてたっけ。

そう思った瞬間、次から次へと先程のそれが頬を伝っていった。
次第に嗚咽ももれてきて、自分が泣いている事を自覚したけれど、泣き止む事など出来るわけがなかった。


「大丈夫。楓さんは1人じゃないから。ボクや笹子さん、パンダくんにペンギンさん…他にもたくさん、楓さんについてるよ。」




だから、安心して
((その言葉を聞いて、目の前が明るくなった気がした。))





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