shortDream3

□君は希望
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「日向君はさ。」

「ん?」


机に突っ伏している雨音が突然声を上げた。
何も喋らないからてっきり眠っているのかと思ったが、どうやら違ったらしい。


「‥‥絶望に、ならないでね。」

「は?」


雨音の言っている意味が分からなかった。
誰だって突然そんな事を言われればそうなるだろう。


「な、なんだよ急に。」


わけがわからず、苦笑してそう問い掛けるも、返事は返ってこなかった。
俺達以外誰もいないこの教室だから俺の声がやけに響いて聞こえた。

何故か、返事のない雨音に不安になった俺は、「おい雨音‥‥?」と相手の肩に手を掛けた。
そこで漸く、雨音が顔を上げた。
その表情は無表情で、何を考えているのか全く分からない。
と、俺の困惑した表情を見た途端ふ、と笑みを洩らした。


「なんでもない。ところで日向君はどうしてここにいるの?」


もうとっくに皆帰っちゃってるよね、と辺りを見回しながら呟く彼女の強引すぎる話題転換に少々戸惑いつつ、俺は答えた。


「お前、ずっと突っ伏してただろ?だから心配でさ。声掛けようにももし寝てたら迷惑だろうし、どうしようか悩んでたらいつの間にか、な。」


すると雨音は目を丸くさせて「え、」とだけ呟いた。
そんなに変な事言っただろうか、と自分の言った台詞をもう一度脳内で再生してみて、顔が熱くなるのが分かった。
なんというか、俺、恥ずかしい事言ったな…!
慌てて弁解(?)しようと口を開きかけた俺だったが、その前に雨音が言葉を発した。


「ありがと。でも大丈夫だよ、ずっと考え事してただけだから。」

「考え事‥‥?」

「‥うん。ほら、私って予知能力者でしょ?‥‥最近予知した事について、ちょっとね。」


一瞬だけ彼女が暗い顔をしたのは気のせいではないだろう。
そんなによくない内容だったのだろうか、という考えが過る。
内容は気になるが、俺が聞いて良いものではないだろう。


「さてと。そろそろ帰ろうかな。」


そう言って立ち上がった雨音。俺もそれに倣い立ち上がった。
歩き出そうとした雨音の腕を、気が付けば掴んでいた。


「‥日向君?」

「雨音はさ。」


雨音と同じように呟けば、彼女は一瞬呆気にとられたような表情をした。


「未来は変えられると、思うか?」


彼女の目が、見開かれた気がした。
俺は言葉を続けた。


「俺は変えられると思う。変えようと思う意思さえあれば。それが自分の望まない未来なら、変えたい‥いや、変えてみせる。」


自分でも何故こんな事を言っているのか全く分からなかった。
けれど、言わずにはいられなかった。


「良かった。日向君は、希望だ。」


そう言って、安心したようにくしゃり、と笑って俺に体当たりするように抱き着いてきた雨音の背に、俺は静かに腕を回した。



君は希望



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