shortDream3

□鈍感
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「よっ‥しょっ…と。」


机に片手をついて、ヒラリ、と一回転。
やっべ楽し。なんて思いながら、もう一度それを繰り返す。
何度かそれをやっているうちに、ふと声が聞こえてきた。


「‥黒か‥‥。」

「は。」


意味が分からずその動作を止めて、声の聞こえた教室の出入り口の方を見れば、そこにはドアに凭れ掛かるようにして立っている黒羽の姿があった。


「何が?」

「あ?‥あ、いや、なんでもねー。」


いや、何もないわけねーだろ、こっち見ながらいきなり呟いたんだから、と思いながら首を傾げる。
けれど黒羽は答えず、それよりオメー何してんだよ、と問い掛けてきた。
話し逸らしやがってコイツ、と思いながらべっつにー、と言って先程の動作をもう一度してみる。


「っば、オメーそれやめろよ!」

「なんでだよ?良いだろ、別に。楽しいんだから。」

「いや、‥その、お前もうちょっと女って自覚持てよ。」


そう言ってちらちらとこちらを見る黒羽。
こんなアクロバティックな事してねーでしおらしくしろってか?やだね。


「人の勝手だろ。女らしく、なんて私には似合わねーし、女らしくしてーとも思わねーよ。」


もう一度一回転しようとして、ジャンプしかけた時、その手を掴まれた。


「…何だよ黒羽?」


ジトリ、と相手を見るも、黒羽の表情が何とも言葉にし難い表情だったので、私は少し戸惑った。
なんだよその表情。


「お前さ、スカートなんだぜ?注意しろよ。」


私の手を掴んでいない方の手でビシッと私のスカートを指さして言ってきた黒羽。
首を傾げて少し考えてから、あ、と声を上げて今更気づく。


「‥‥お前‥見たな?」

「見えちまったんだから仕方ねーだろ?オメーがあんな事してっから。」

「‥まぁ見られて減るもんじゃねーし良いけど。」


と私が言った瞬間、黒羽が「お前そこは気にしろよ!」と叫んできたが、私にそういうのを求められても困る。
それから私はハッとして、黒羽に謝った。


「あ、そっか。黒羽悪い。」


突然謝った私に、きょとん、と黒羽は目を瞬かせた。


「へ?」

「ほら、見ちまったんだろ?こんな男みてーな奴のなんて見ても気持ち悪いだけだろ?だから悪い。」

ぽかん、としている黒羽をその場に置き去りにして、次からは気を付けるなー、と言って手をひらひらと振って、教室を出た。



鈍感
(黒羽には悪い事しちまったなぁ…)
(‥気付けよ、バーロォ…)



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