shortDream3
□うらめしや
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「暗いトンネルの中を車で走っていると、ぼんやりと、視界を何かが霞めたんですよ、車越しに。」
「…。」
「雨で見間違えたんじゃないかって?違うんですよ、ほんとに。ほんとに、いたんですよ‥そこに。白い着物を来た、顔のない女性が!!!」
パチっと部屋の電気が点けられる音がすると同時に、部屋が明るく照らされる。
私は電気を点けた人物の方へと目を向けた。
「んなに暗いとこで見てっと、目悪くなるぜ?」
「点けるの面倒だったんだもん。」
私がそう言うと、呆れたと言わんばかりにはぁ、と溜め息を吐いた快斗。
こっちは夏の暑さでバテてんだよ、バーロォ。なんて快斗の口調を真似して心の中で呟く。
「で、何見てんだよ。」
「なんか怖いの。」
「へー。何々?楓ちゃん怖くて眠れねーの?仕方ないから快斗君が一緒に寝て」
「ノーセンキュー。」
言ってから、私は立ち上がった。
快斗はちぇっ、と唇を尖らせた。
「オメー、怖くねぇの?」
「残念ながら、私こういうの全然平気なんだよね。女性の幽霊見たってんならビデオにおさめろってんだ。証拠見せなさいよ、証拠、って感じ。」
バッサリとそう言い捨てれば、快斗は「可愛くねぇ奴。」とつまらなさそうにソファに座り、テレビの方へと視線を向けた。
私がリビングから出ようと足を動かしたその時、快斗が私の名前を呼んだので、振り返った。
「証拠ビデオ、だとよ。」
そう言ってテレビの方へと視線を向けるように促す快斗につられ、私は視線をそちらへ向けながら、快斗の隣に腰を下ろした。
「‥ビデオ撮ってるとかどんだけ用意周到なわけ。」
そう呟いた私の言葉に苦笑する快斗を横目に見つつ、そのビデオとやらを私達二人はじ、と見つめた。
ビデオはトンネルに入る前のところから撮られているようだった。
トンネルに入った車の車内は大分暗く、少し見辛かったが、辛うじてトンネルの灯りが車内をぼんやりと照らしていた。
薄気味悪いな、と思いながら見ていると、窓の方に注目、という字幕が表示された。
窓は雨で濡れていて、やはり見辛かった。
けれど確かに、映った。
「…白い、着物を着た女性が窓に‥。」
その後その車を運転していた男の人が驚いて、キキィッとブレーキを踏んで車の外に飛び出して、辺りを見渡している様子が流れた。
しかしそこには誰もいなかった。
「‥‥へー。すげーなこりゃ。どうだよ、楓、これで信じ‥‥楓?」
快斗が話し掛けるも、何も反応を示さない。
快斗が顔を覗き込むと、そこには顔面蒼白の楓がいた。
「‥‥楓ちゃん。もしかして、怖い?」
するとゆるゆるとこちらに顔を動かした楓は、きゅ、と快斗の服を掴むとゆっくりとこく、と頷いた。
うらめしや
((何この子可愛い。え、何この子。可愛いんだけど、ちょっと。))
((まさかこんなに怖くなるなんて…証拠ビデオのバーロー、!))
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