shortDream3

□すれ違い
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「は?ちょ、アンタ何言ってんの?」

「だから、新一君は蘭が好きなんでしょ、って。」

「‥‥。」


何回も言わせないでほしい。ただでさえ、傷ついているんだから。
苦しいよ、自分の気持ちに嘘を吐き続けるのは。
それでも、二人には幸せになってほしかったから、私は。


「アンタねぇ…。ほら、新一君もそんなとこで固まってないで、こっち来て誤解解いたらどうなのよ!」


いつの間にか私の後ろにいた新一君。
驚いて私は椅子から落ちそうになった。


「あ、嗚呼‥楓、」


新一君が私の名前を呼んだ瞬間、私は席から立ち上がった。


「ごめん私、ちょっと気分が優れないから、」


保健室行ってくる。
その言葉を言うと同時に私は教室を飛び出していた。

知ってるよ。新一君が蘭しか見てない事くらい。
知ってるよ。だから。


「‥‥だから‥、追ってこないでほしかったな、」


ぽつり、と呟いて、屋上に来てしまった私は振り返った。
そこには息を切らした新一君がいて。


「オメー、いきなりどうしたんだよ?」

「‥気分が優れないんだよ。」


ぽたり、と落ちた涙。
自分が泣いているんだと自覚した時、暖かい温もりに包まれていた。


「しん、いちくん、」

「オレは、蘭の事なんとも思ってねーから、」


私を落ち着かせる為にそんな嘘吐いてるんだよね。
知ってるよ、知ってる。だから。


「優しいね、新一君は…。」


ゆっくりと、自分から新一君を離して。
それから微笑んで、言った。


「でも、駄目だよ。こういう事は蘭だけにやってあげなきゃ。」


ね?と笑いかけてから、じゃぁね、と私は屋上から逃げるように去った。




すれ違い
(どうか、お幸せに。)
(‥バーロォ‥ッ、オレが好きなのは、お前だってのに…!)




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