shortDream3

□とびきりの笑顔
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いつからだろう。
ううん。中学校に入ってすぐだ。

友達に言われた、あの言葉が切っ掛けで、こうなったんだ。
別に、その子のせいにしているわけじゃない。
自分が取った行動だから、別に、良いんだ。

寂しく思う度に、これで良かったんだ、と何度も心の中で呟いた。

本当は、心が悲鳴をあげている事は知っていた。
でも、気付かないフリをしてきた。
よく、持ったな、と思った。この4年間と、少し。

‥私の大切な、幼馴染達と距離を置いて、4年間と少し。




私は小学校6年生まで、工藤君と蘭と、ずっと一緒にいた。
ずっと幼馴染で、これからもそれが続くんだとばかり、この頃までの私は思っていた。

でも、中学校に入って、入学式の時、クラス表を見ていた時に、隣にいた友人に言われたその言葉。


「中学生になって男子の事名前を呼ぶなんて、珍しいよね。」


言われた時は、ぽかんとしてしまった。
あれ、そうなの?と本気で驚いた。
でも、言われてみると確かに、中学校にあがった途端お互いの事を苗字で呼ぶようになった人達は多いかもしれない。


「楓もさ。工藤君には毛利さんがいるんだから、誤解されちゃうといけないから、呼び方変えたら?」


多分、この言葉が一番胸に響いたんだろう。
はじめの言葉なんて、切っ掛けになった言葉じゃない。この、言葉なんだろう。


この友達の言葉を聞いたその日から、私は新一から、工藤君に呼び方を変えた。
決意したその時から、私はもう距離感が分からなくなってしまった。

だから、はじめは蘭と工藤君の少し後ろを歩いていたけれど、段々と、追いつけない程後ろを歩くようになった。

毎日、蘭と工藤君が私に話し掛けようとしてきてくれていた。
でも、私は何故かそれが怖くて、逃げて、逃げて、逃げ続けた。

よく逃げてこれたな、と我乍ら驚いている。
その友人には、何もそこまでしなくても、と言われた。
でも私は、「私が決めた事だから」と苦笑してみせた。


工藤君と、蘭の邪魔をしたら悪い。

いつしか、その考えばかりが頭の中を巡るようになっていた。

そんなある日の事だった。

帰り道。一人でとぼとぼと歩いていると、突然腕を掴まれた。
驚きで目を見開いた。
もしかして、変質者?
そう不安に思いながら、ゆっくりと振り返ると、そこには息を切らした工藤君がいた。


「やっと、捕まえた。」


肩で息をしている工藤君に、私は戸惑った。

どうして、もう何年も経っているのに、私に構おうとするの?

そんな疑問が頭の中を駆け巡った。
それからハッとして、逃げよう、と相手の手を振り払おうとするも、そこは男女の力の差か、全く離れる気配はなかった。


「‥ちょっと付き合ってもらうぜ。」


そう言って、無理矢理私を引っ張った工藤君に、涙が出そうになった。




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