shortDream

□口実は偶然で
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「やぁ、楓さん。偶然だな!」




「・・・・・。」




何故私は毎日山田君に会わねばならないのだろうか。
今日はバイトだからまぁ、仕方ないとしよう。
けれどバイトが無い昨日とか・・というか最近毎日会ってる気がするぞ。
っというか偶然じゃないよね、バイト先だったら君が来たら必然的に会う事になるよね。


「楓さん?」





「嗚呼、うん。こんにちは山田君、」





まぁ嬉しくないと言えば嘘になるけれど。





「本当によく会うね。最近毎日じゃないかな。」





「っあ、嗚呼、そう・・だな。」





「・・どうかした?」





「い、いや!なんでもない!」






「そう?・・あ、そうだ。今日も妹さん探し?大変だね、」




本当は今店の屋根裏にいる葵ちゃんなんだろうけどそれは相馬さんに口止めされてるから黙っておこう。
ちょっと罪悪感はするけど。
その気持ちを微苦笑とともに流す。




「あ、いや、今日は違うんだ。」





「ん?もしかしてまひるちゃん?」





そういえば山田君はよくまひるちゃんと話しているような気がする。
そう思った途端少し胸が苦しくなったのは何故だろう。





「い、いや、そうじゃなくて、」





「あれ?違う・・・?」





じゃぁなんだ、普通に食べに来てくれたのだろうか?
それなら何故裏口から入ってくるのだろうか。





「・・ぐ、偶然通り掛かったから寄ってみただけで、楓さんに会いたくて来たわけじゃなくてだな、その、」





珍しく慌てている山田君の言葉に目を丸くする。




「もしかして山田君、毎日此処に来てる、?」






「ぐ、偶然だ!!よ、よく此処を通り掛かるだけでだな、」





「なんだ、必然だったわけか、」





「ぐ、偶然だ。」





「そういう事にしておいてあげる。」





少し頬を染めむす、としている山田君を可愛い、と思ってしまった。
こんな事本人に言ったら怒るかなぁと思い開きかけた口を閉じる。






「何で笑ってるんだ、?」





どうやら私は顔に出してしまったらしい。
当然山田君は更にむすっとしてしまうわけで。
謝ろうと口を開きかけたその時その口が塞がれる。





「これで許そう。」





にっと口角を上げて意地悪な笑みを浮かべた山田君に不覚にも鼓動が早くなったのは、偶然の所為にしてしまおうか。
それと同時に頬が熱くなったのも、偶然。


偶然偶然必然。






偶然ですか?
必然です。






Fin.
 

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