shortDream2

□人生の先輩
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「佐藤さん佐藤さん!」

「・・なんだ雨音。」


はぁ、と溜め息を吐きながら雨音を見る。
雨音は少し戸惑ったあとこんな事を言い出した。


「佐藤さんって八千代さんが好きなんですよね!」


咽た。

俺は雨音の額にデコピンをかました。


「いだっ。何するんですか!」

「なんだよ急に。」

「恋する佐藤さんに恋の相談をしようとっていだだだだだっ!佐藤さん!なんですか!なんなんですか?!」

ぐりぐりと雨音のこめかみを潰してやると雨音は悲鳴をあげた。


「悪い。で、なんだ。お前好きな奴いんのか。」

「いえ私じゃなくていえ私です。」

「そうか伊波の奴か。」

「なんで?!」


俺がそう言うと吃驚したように目を見開いた雨音に悪い、冗談だ、と言ってやる。
するとほっとしたように胸を撫で下ろした雨音。


「えっと、好きな人が全然こっちを向いてくれない時はどうすれば良いでしょうか。」

「・・・。」

正直俺が知りてぇ。
そう思ったが敢えて口には出さず考える。


「そうだな。押してみたらどうだ?」

「押す・・?」

「嗚呼。どちらかと言えば引き気味だろ?ならその逆を試してみりゃ良いんじゃねぇの?」

「・・・そっかそっか。有難う御座います佐藤さん!流石人生の先輩ですね!」

「は?」


俺がぽかん、としている事に気付かず雨音は本当に有難う御座いました!とぺこりと頭を下げてどこかへ走って行ってしまった。
暫くその場で硬直していると後ろからぽん、と肩を叩かれた。


「相馬か。取り敢えず殴らせろ。」

「なんで!?俺まだ何にも言ってないんだけど!」

「まだって事はなんか言うんだろ。」

「理不尽だよ佐藤君!ただ俺は、あんな風に人にアドバイスしてるから自分の恋が実らないんだよって言おうとって痛い痛い痛い!佐藤君!耳引っ張らないで!千切れちゃう!!」

「情報収集出来ねぇようにしてやる。」

「やめて!お願いだから!!!」


何が悲しくて好きな奴にアドバイスしなきゃなんねぇんだ、と今更ながら思う。
確かに今回ばかりは相馬の言う事は合っている。
だから余計に腹が立つ。


「っ痛かった〜。佐藤君がいつまでももたもたしてるんだったら俺雨音さん捕っちゃうよ?」


あはは〜、と笑顔でとんでもない事を口にした相馬に一発蹴りを入れる。
コイツはなんつー事言いやがる。
どうも冗談には聞こえない。


「いたた・・今冗談って思ったでしょ?そろそろ本気で捕るよ?」


その相馬の表情を見る限り本気だ、という事が分かる。
さっきからとるの漢字変換がおかしい気がしてならないのはおいておくとして。


「初めから狙ってたのかよ。」

「んー、どうだろうね〜。」


にへらりと笑った相馬が雨音のところへ向かおうとしていたので取り敢えずフライパンで叩いておいた。



人生の先輩、か。
まだまだ道のりは長いんだろうな。



Fin.
 

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